暫く経つと小太郎、否父様が私の肩に寄せていた顔を上げると私の後ろに居る佐助を見た。
それに合わせて私も佐助を見ると、いきなり二つの視線が自分の方へ向いたのに驚いたのか目を大きく開けて私と父様と視線を動かした。
その佐助が面白くて見ていると佐助が「よ、良かったね紅太郎」と言って私にぎこちない笑みを浮かべてきた。
私は「うん」という意味を込めて大きく首を縦に振れば佐助は今度は柔らかい笑みを私に浮かべた。

佐助が、私から父様に視線を変えると「で、風魔はこれからどうすんの?」と笑みを浮かべながらも真剣な顔つきで父様を見た。
すると父様は唇を動かす。私にはなんて言っているのか分からなかったけど佐助は分かったようで「うん」と言って瞳を閉じ安心したように笑みを零した。そして腰に手を当て「俺様の働きは無駄じゃなかったみたいだね」と言って顔を下へと向けた。

良く分からず父様と佐助を見ていると佐助は私に近づいてきて頭を撫でながら「風魔はね、紅太郎と一緒に住むって」と教えてくれた。
その言葉を聞いて私は心臓の辺りがかぁーーっと熱くなった。そしてすぐに佐助から父様に視線を変えると「ほんとう?」と聞いた。すると父様はすぐに頭を縦に振った。
「良かったね紅太郎」そう言いながら私の髪に頬を寄せる佐助に私は佐助の頬に手を寄せて頭を擦り付けた。

「ありがとうさすけ」

そう言った私に佐助は泣きそうな笑みを浮かべた。
きっと佐助が居なかったら私は父様に会えて居なかった。佐助が居たからこそ居間の私が居る。
私は佐助に感謝してもしきれない。これから佐助には色々とお礼をしたいと思った。何が出来るのか分からないけど少しずつ感謝を形に変えて、母様には出来なかった事を佐助に。

「風魔も感謝してよね!誰のお陰だと思ってんの」
ふざけたように言う佐助に父様はぺこりと頭を下げ、また佐助に何かを言う。

「なんだか風魔にお礼言われるのって変な感じ」
と苦笑しながら笑う佐助。きっと父様は佐助に感謝の気持ちを述べたのだろう。多分。

と、脳内で解釈していると
「じゃあ俺様はとっとと退散しますかーー」と言って佐助は私達に背中を向けた。

「さすけ、いちゃうの?」
佐助が行くと分かって私は急に焦った。。今までここまで私を連れてきた佐助。
その佐助が居なくなるのは凄く寂しい。
佐助は私に首だけ向けると、「後は家族水入らずってね!たまーーに遊びに行くるからさ!」
私が寂しいというのが分かったのか、佐助はそう言ってくれた。
私は「ぜったいだよ!」と言って佐助の背中に言った。佐助はそのまま闇に消えるように消えていった。

佐助が居なくなって辺りがしん、と静かになったような気がした。
これからどうすのかと思い父様の方へ視線を送ると父様はじっと私を見てから体に風を纏うと、地面へと足をつけた。
そして私に唇を動かし何かを言っているが当然何を言っているのか分からない。首をこてん、と傾げ父様を見ると父様はまた黙って私をじっと見た。

「ごめんなさい」

父様の言っていることが分からなくて。という意味を込めて謝ると父様は首をゆっくり横に振った。
そのことに少し安心しながら、私は歩き始めた父様の腕の中で、ただ何処に行くのかを視線で追っていた。
見ると父様は城の中に入り、ある部屋の前で私を抱えたまま跪いた。
すると中から「風魔か入れ」という聞いたことのある声が聞こえてきた。
父様ががらりと襖を開くと、そこにはやっぱりというかお馴染みの氏政様がそこに居た。
氏政様は入ってきた風魔、いや、父様に抱かれている私を見て目を丸くした。

「ふ、風魔!そ、その子供は!!!!」

動揺を隠し切れない氏政様に父様は紙と筆を取り出し、さらさらと字を書く。昔の人の字は分からないけど、微かに「子供」と書かれているのが分かる。
その紙を見て氏政様は悲鳴に近い声をあげ後ろに倒れこんだ。

「風魔の子供とは驚いたわい!!!」

氏政様はすぐに体を起こすとそう言うと、私をまじまじと見た。

「見れば見るほど風魔にそっくりぢゃわい」

顎に手をやって唸るように言えば、「名はなんと申す」と私の目を見て言ってきた。
そんな氏政様に「紅太郎」と名前だけ言うと、氏政様は「ほお、いい名ぢゃ」と言って自分のもとへ来るように手招きする。
私はちらり、と父様を見ると父様は私にも分かるようにゆっくりと「ー大丈夫ー」と言ってからこくん、と頷いた。

私は父様から離れると氏政様のところへ、ぺとぺととなんとも情け無い足音をたてながら傍による。
氏政様は私の髪と瞳をじっくり見ると、ふっ、と笑って「可愛い子ぢゃな風魔!」と言って私の髪をぐしゃぐしゃと撫で繰り回した。

いきなりの事に驚いていると、氏政様が私を抱えた。そしてそのまま父様と何か話をしている。
話している内容は「住む所は」とか「これからは」とかそんな事だ。返事は父様が全部紙に書いているから分からない。
私はただ氏政様に抱かれながらただ時間が過ぎるのを感じた。

それから話が終わったのは暫く立った後で氏政様が「じゃあそういう事でいいんぢゃな」と言って父様が頷いて終わった。
なんのことだかさっぱり分からない私はうとうとと船を漕いでいたが重い瞼を起こして二人を見る。
氏政様から父様に抱きかえられると、父様は私の頭を撫で、氏政様の方を見た。
氏政様は「分かったわい」と言って私に今のことを説明してくれた。

話の内容は、これから私をどうするのか。家はどうするのか。仕事はどうするのかという事だった。
それに対しての答えは。一緒に住む。家は城の奥の部屋を使わせてもらう。仕事は続けるが、前に比べて命を少なくするという事だった。

父様は山奥の小屋に住んでいたのだが私のことを考えてそこに住むことにしたらしい。氏政様の命が少なくなるというのも私と過ごす時間を多くするためで、勿論内容も出来るだけ生死にかかわる様な命は出さない、という私を中心に話を進めていてくれていた。

「それにしても孫に子供が出来たみたいで嬉しいのお」
と言って氏政様は目を細め私を見た。

「わしの事は爺でもなんとでも好きに呼ぶが良い」

いやいや、一国の主様に爺は言えない!という意味を込めて父様を見ると、首を縦に頷いた。
父様!?駄目だよね!呼んじゃ駄目だよね!!
父様はそう言っても大丈夫だと言っているけど、なんだか申し訳ないような気がして、考えた挙句私は「じいさま」と呼ぶことにした。

すると氏政様は嬉しそうな顔をして「今度甘味を買ってやるか!」と機嫌良く言った。私は内心安心しながらほっ、と息をついた。






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