私と佐助は一晩野宿した後、朝日を待ってまた歩き出した。
佐助は途中何度も私を心配して「俺様抱っこしてあげようか?」や「どう?疲れた?休む?」などと聞いてきたが
一刻も早く父様に会いたい私は疲れたなどと言わず、また佐助の迷惑になるだろうということで抱っこは拒否した。

こちらの世界にきてから何かと体力がつき、小さい体だがある程度の距離を歩いても少々疲れるが脚が痙攣したり、痛んだりという事は無かった。
そんな私を見て「やっぱり風魔の子供だねー」と言っていたのが聞こえて、父様の子供だと言ってくれたのが凄く嬉しかった。

佐助に「えへーー」と微笑んで嬉しいというのを態度で表すと佐助は口元を緩め「んもーー紅太郎は可愛いなぁ!」と言って私の頭を撫で回した。
なんだか佐助は優しいお兄さんという私の中で出来たポジションに位置した佐助。茶屋で団子だのなんだの甘味を買ってくれたりしてくれているところもお兄さんっぽい。
へらへらとした態度なのだがしっかりとして頼りになる素敵なお兄さんだ!

そして佐助に買ってもらった団子を食べていると佐助がぴくっと何かに反応した。
なんだろうと佐助を見ると、佐助は仕事の顔なのか凄く真剣で怖い顔をしていた。そんな佐助の表情にびくっと肩を揺らした私に気が付いたのか
佐助はすぐに笑顔に戻って「あぁーーーごめんね?別に紅太郎に怒ってたわけじゃないから大丈夫だよ」と言って私の手を掴んだ。


すばやくお金を店に渡すと佐助は私を抱え森の中へと入った。
何がなんだか分からない状況についていけない私は不安な表情で佐助を見れば、「ごめんね、少し静かにしててね」と言って私の頭を手拭いで隠すと自分の腕の中で私を抱えなおした。

冷静になって状況を考えると、何かの気配が近づいてくるような、そんなものを感じた。多分人で、数人の人が佐助を追いかけている?のかな?
良く分からないが自分の勘ではそう言っている。

佐助は木の根で出来た穴の中に私を入れると、「少しここ動かないで待ってて」と早口で言い、視線を前に向けた。
穴から佐助を見ていると、佐助の目の前に何人かの、忍び、が木々から降り立った。
凄い自分の勘当たってた!!


「佐助、か。風魔小太郎ではなかったか」
忍びのリーダー的な奴が話す。
「なになに〜〜〜、風魔に用があったの??俺様で残念!風魔なら小田原に居るんじゃない??」

どうやら相手の忍びは私の父様を探していたらしく、偶々忍びの気配を感じ取ったこの人達が佐助を追いかけてきたらしい。
重い口調で話す相手の忍びとは対照的に飄々とした口調で話す佐助。その佐助の姿には余裕が感じられた。

「ねえ俺様に用無いんでしょ?俺様もう行ってもいい??」

だらだらと手を振りながら話す佐助に対して構えを解かない相手の忍び。

「ならば聞こう。そこに居る子は何者だ」

そう忍びが言った瞬間私は弾かれたように後ろに下がった。
相手に私の存在を気付かれていた。佐助が舌打ちするのが聞こえる。忍びの中でも強い忍びなのか、それともただ単に私の気配がそれほど洩れていたのか。

苦無を構える忍びに対し、佐助は手裏剣を手にとって「あんた等も馬鹿なことしたね。残念だけど死んでもらうよ」と先ほどとは打って変わって地に響くような低い声で言った。

その声の後には斬られる音と、悲鳴とうめき声と何かが潰れた様な音だけが辺りに響き渡った。
私は早く終わるようにと耳を塞いで待っていた、しかし、穴の外から何者かの手が私の胸倉を掴み無理やり外に引きずり出した。

見ると、私の胸倉を掴んでいるのは相手の忍びのリーダー格の人で、口元は布で隠れているが嫌な笑みを浮かべているのが分かり、思わず鳥肌が立った。
後ろから佐助が「紅太郎!!」と叫ぶ声が聞こえていたが佐助は忍びを相手にするので一杯の状態だった。
しかしそれでも流石佐助、婆娑羅技を使い忍びを次々倒していく。
だが、この男、手から氷を出し、佐助の闇を打ち消した。どうやらこの男も婆娑羅技が仕えるらしく、私を片手で掴みながら佐助に横から技を出している。

「動くな、動くとこいつの命が無いぞ」

そう忍びに言われ佐助の動きはぴたりと止まった。
忍びは私の頭に巻いている手拭いを外すと「この髪は、」と声を洩らした。

「なんだ、風魔小太郎が子供に化けていたのか」
とにやにやとと効果音が出そうなほど気持ち悪い笑みを浮かべた忍び。
どうやら佐助と同じく私を風魔だと思っているらしい。
私はただ恐怖でその忍びを見つめていた。「紅太郎!今俺様が助けてやるから!」という佐助の声が唯一の光だった。

心臓がばくばくと五月蝿く鳴って、口の中がカラカラに乾いて。視線をキョロキョロと忙しなく移動させ。
私は何かしなくてはと考えた。自分の命、自分で守らなくては。しかし何をする。
佐助の足を引っ張って、それでこんなところで死んだら私馬鹿みたいじゃないか。
こんなところで死んでられない!私は忍びをきっ、と睨むと「はなして!!!」と叫んだ。
その瞬間私の周りから発生した風。暴れるような風が私を掴んでいた忍びを吹き飛ばす。
私は自分から出た風に驚いていたが、忍びの腕から離れ宙を舞った私の体が地面に叩きつけられたことに意識をとられた。痛みに声を我慢しているとその隙に佐助がその忍びを手裏剣で首を跳ね飛ばした。


一瞬にして終わった出来事に私は安心して意識を手放した。





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