私に母様の名前を聞いた佐助は固まったまま、じっと私を見ていた。
その表情からは驚きが取れて見えて母様の名前から何か分かった事は確かだ。先ほどからの佐助の真剣な表情に私も自然と真剣な表情になった。
私は黙って佐助を見ていたが、佐助はしばらく考えてからその重い口を開いた。

「ねぇ紅太郎、俺様さ、もしかしたらあんたの父親知ってるかもしれない」

少し震えるような声に嘘では無い事が分かった。
私は驚いた。目を大きく広げ佐助を見て小さく「父、様?」と聞いた。
すると佐助は「そうだ、父様だ」と言って首を縦に振った。

お父さんを知っている??佐助が、私のこの世界のお父さんを知っているの??
私は手が震えるのが分かった。佐助はそんな私の手を優しく握り、「会いたいか?」と優しく言った。

勿論会いたい、会いたくて会いたくてしょうがない。
血の繋がりの母様が亡くなった時からずっと父様に会いたかった。血の繋がりが欲しかった。寂しくて寂しくて仕方がなかった。
私は涙を流し「あいたぃ」と言って佐助の手を握り返した。

佐助は自分も泣きそうになったのか眉間に皺を寄せ、私を抱き寄せた。そして頭と背中を強く抱きしめてから「そうだよな、会いたいよな」と言って嗚咽が洩れる私に何度も何度も私の背中を擦った

優しすぎる佐助に私は大きな声で泣いた。
こんなに泣くなんてこの世界ではじめてだった。今までは声を押し殺して泣いていた。だけど今だけは思い切り泣きたかった。
私が泣き止んだのを見計らって「けど」と佐助が怖い表情をしながら話した。

「もしかしたらあんたの父親はあんたを殺すかもしれない。それでも会いたいか」

と、じっと私の瞳を見据える佐助の瞳に私は大きく頷いた。
そんな私を見て佐助はふっ、と目を細めて笑った。

「もしそうなったら俺様が守ってあげるからね」

そんな佐助の言葉が心に深く染み渡った。
そして私はその日のうちにお爺さんとお婆さんに本当の父親に会いに行くということを佐助と共に告げた。
二人とも最初は佐助を疑って帰れだのなんだの言っていたが佐助の真剣な表情と、私の父に会いたいという気持ちに折れ、最後は涙を流しながら私を見送ってくれた。
一年間一緒に過ごしてきた二人と離れるのは凄く辛くて、二人の腕の中で泣いた。そしてきっと二人に会いに行くからという言葉を二人と交わし、佐助と共にお父さんの元へと向かった。

なんとも急すぎる話だと思うがそれほどまでに私は父に会いたかった。
どんな人でも良かった。たとえ鬼のような人でも私は父に会いたかった。
そこでふと、佐助から父の名前を聞いていないことに気付いた。

「さすけぇ」
と佐助の手を握りながら話しかける。佐助は「んーー、なぁに?」と言って視線を私に合わせる。

「こうたろうの父様のおなまえってなに?」
と聞くと佐助は少し苦笑しながら「言ってもいいよねー」と呟いてから私に名前を教えてくれた。


「風魔小太郎だよ」


……ふうま、こたろう???

「ふーまこたろう???」
「そう、風魔小太郎」


母様、母様。
私は貴女様に聞きたいことが出来ました。そして大きな感謝を送りたいです。
ありがとうございますぅぅぅぅううううううう!!!!!!!!!
ちょっ!!さっきまでの暗いイメージを吹き飛ばすように私踊り出したいです!!!え、本当に、本当に私の父様が風魔小太郎!?!?!?
何となく、そうだったらいいなーーーーとは思ったよ?????まさか本当に父様が風魔小太郎だったなんて!!!!!あーーーーーー発狂しそう!!!発狂したい!!!!もう、もっと父様に会いたくなった!!!父様って言いたい!!!会いたい!!!!お顔見たい!!!!!!


という脳内爆発状態で私は表情はきょとんと、えっ、それ誰?みたいな表情してますよ!!!
ここで喜ばれたら明らかに変だからね!!!佐助に怪しまれちゃうからね!!!
うわーーーどうしよう。凄く嬉しい。母様貴女素晴らしいことをしてくれました。佐助に会えて「佐助」と呼べるだけでも幸せなのに、あの小太郎の子供なんて!!!もう、にやけまくりんぐ!!!


っと、爆発はここまでで、あとはちょっと真剣にこれからのことを考えてみる。
小太郎、つまり私の父様は伝説の忍びでして、自分が邪魔だと思った存在は消しまして、つまり私は小太郎にとって邪魔な存在でしかないわけでして……。


佐助がなんで守ってあげるとか言っていたのか凄い分かる気がした。
ヘタしたら私、父様に一目会って、何か言う前に死んじゃうかもしれないって事だ。
そんなの嫌過ぎる!!!今の今までしぶとくゴキブリのように生きてきたんだ!!父様に会ってハッピーエンドにはならない!!!ゲームクリアじゃないよ!!!私は父様と一緒に生活したいんだ!!!!


見た目普通にしている私の脳内はごっちゃごちゃで、その後は佐助に話しかけられたこと以外話さない、顔を見ない(脳内で忙しかったから)という事で、佐助にまるで小太郎みたいだと思われていたのは知る由も無い。




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