(佐助視点)

風魔を殺るために大量の忍びを送ったという話を聞いたのはその日の昼だった。
相手は北条を目の敵にしているどこぞの武将さんなのだが、実はこいつ武田にも目を付けているらしく部下だ何人かやられている。
まぁ、その武将さんは忍びを馬鹿みたいに雇い風魔の存在を消した後北条家をやろうという考えだったらしい。


普通に考えたら風魔が普通の忍びにやられるわけないと思っていた。それは幼い頃からの付き合いから分かる結果で、俺様でもあいつを殺るのは相打ち覚悟になる。
しかし、どうしてか今回は嫌な予感がした。


そしてその日部下から聞いたのは風魔は相手と相打ちになったということだった。
伝説の忍びと呼ばれてて居るあいつから考えるとなんともあっけのない最後だと思った。
確かに今回は数が半端な数ではなかったらしいが、風魔なら大丈夫だと思っていた。しかし、何か卑怯な手でも使われたのか良く分からないがそういう結果になったらしい。


「ご苦労。あとは敵国の様子を見てくるように。何か変わった様子があったら俺様に知らせること。分かったら散れ。」


風魔のことを報告してくれた部下数名に命を出し、俺様は風魔の姿をその部下が言っていた場所へと脚を運んだ。
脚を止めず森の中を奥へ奥へと進んでいくと一段と血の匂いがする場所へとたどり着いた。


明らかに風魔のものと分かる苦無と血。しかしそのに風魔の姿は無かった。この量の出血で一体どこへ行ったというのだ。


血の跡もそこで途絶えている。忽然と姿を消したように風魔の痕跡はそこで終わっていた。まるで神隠しにあったかのように。
しかしこれを見て確かに思った事が風魔は生きて居るということだ。こうなったら部下に風魔を探すように命を出そう。


相手について何か情報が得られたのなら聞き出したい、それにどうやってこの怪我から生還できたのか。もしそれが分かったら俺様も少しは忍びとしての行動範囲が広がるし部下にも教えたい。
俺様は大至急風魔を探すように部下に言った。


そして風魔の存在を見つけたのは今日。
何人かの部下がやられたが、生還した部下が言うには風魔は山奥の小屋に居るということだった。


北条の方にも風魔の姿はあったが、あれは分身だった。
普通の忍びには分身かどうかはわからないが、同じ分身が使える仲間からすると分身だというのは分かる。
ただ一発では分身とは分からなかったけれどな。そこは悔しいね。


俺様は早速風魔のところへと向かった。
山奥の小屋、場所を教えてもらってその日の夜に。今夜は新月で月が無く純粋な暗闇が広がっていた。


忍びとしては忍ぶにはもってこいの夜だ。
俺様は部下を引き連れて風魔の居るといわれるその小屋へとたどり着いた。風魔の事だからきっと俺様達の存在には気が付いてるだろう。


そう考えた瞬間、何か鋭い物で何かを切った音が辺りに響いた。見れば部下の首が飛んでいる。
上を見上げるとそこには木の上に静かにたたずむ風魔の姿があった。


「やっぱり生きていたね風魔。俺様信じてたよ?」


自分でも分かる気持ち悪い笑みを浮かべて風魔に話しかければ風魔は表情を変えず刀を手に取った。
その瞬間に火花が散った。風魔の刀と俺様の苦無が互いに弾かれた。静かな空間に金属音が響き渡り部下達は俺様と風魔から放たれる殺気にその場から動けなくなった。


「お前等、先に小屋に行って何か無いか調べて来い」


枯れ葉が擦れ合う様な囁きの声。忍びなら習得しなければならないもので、声を前に飛ばすことにより小さな声で相手にそれを伝えるというものだ。
その声を部下に飛ばし、部下がそれを聞き取ると小屋へと脚を向けた瞬間、その部下が一斉に血を吹き上げて倒れた。


いつの間にか風魔は俺様から離れ部下を殺っていた。その早業に驚いたがそれよりも風魔の様子が先ほどと変わっていたことだった。


すぐに何かを悟った。小屋に何かあるという事に。
今までに無い事に笑った俺様は部下を差し置いて自ら小屋へと脚を運んだ。
風魔からの攻撃をよけながら進み、小屋を目指す。後ろでは俺様をかばうようにした部下達が倒れていく音がした。


だが俺様は前の小屋を目指した。
しかし、すぐに背中に殺気を感じ苦無で風魔の刀を受け取ると部下は全員死んだ事が分かった。


「ねぇ風魔、俺様今まであんたのそんな必死な姿見たこと無いよ?」
「・・・・。」
「小屋に何かあるんだろう?俺様それ知りたいな。」


一段と力を入れ重くなる風魔の攻撃。ここまで感情を露にする風魔を見るのは本当にはじめてだ。
驚きと同時にそこまで風魔を働かせる物がなんなのかが知りたくなった。忍びだからとかではなく、純粋に俺様が知りたいからという感情。


しかし、今では分が悪い。いったんここは引くか。
俺様は風魔ににやりと笑って姿を消した。悔しがる風魔が目に浮かぶようでまた楽しかった。


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