眠りから覚めるとそこは見知らぬ小屋だった。
しかししばらく考えてから、ああそういえば神になって小太郎を助けてからこの小屋に来たのか。というのを思い出した。


小太郎の気配は外にある。なにをしているのか分からないが別にいいだろう。
俺は外へと繋がる戸を横になりながらみると、調度小太郎が外から帰ってきたところだった。

「おはよう」

そう小太郎に挨拶をすれば口パクで「おはようございます」と言われた。
小太郎は俺の傍に寄ると濡れた手拭いで俺の体を拭き、用意された朝餉を出された。
一体どこの良妻なんだ。


「そこまでしなくていい」
そう言えば小太郎は首を横に強く振った。小太郎がしたいというならば別に止めることはしないが。
朝餉を食べ終わると小太郎が俺と向き合い、ただ流しているだけの無造作な髪型を指差した。これはどういうことだろうか。
「髪がどうした」問えば小太郎は自分の方に指をさす。

これは自分に髪を弄らせて欲しいと言うことか。
別に断る理由もない俺は小太郎に「弄りたければ好きにすればいい」と答えると小太郎は早速と言ったように俺の前髪を上げた。


その瞬間小太郎は固まり俺の顔を食い入るよう見てきた。
そんな小太郎の様子に何かを感じ「何かついてたか?」と言うも、小太郎は首を横に振る。俺が良く分からぬまま小太郎は堰を切ったように俺にまた噛み付くようなキスをしてきた。角度を変えて何度も。


暫く経って満足したのか小太郎は俺の後ろに回りどこからとりだしたのか分からない櫛で俺の髪をとかす。
前髪は小太郎の手によって後ろに流された状態で留められた。すっきりとなった視界に嬉しそうな小太郎の表情がよく見えた。
今までは本当に気配だけで感じ取っていたのが今になってよく分かる。


神になって二日目の今日は、山を知っておこうと小太郎と共に辺りを探索することにした。
小太郎が俺の足元に植物が生えたのに驚いていたが俺は気にせず前を歩いていた。
俺が歩けば山はざわめき、なんとも言えないものがこみ上げる。すっと木に手を伸ばせば木は喜ぶように成長を早めた。


この山の主はどこか・・・。山にはかならず主が存在するのだと言う。その主に今の山の情報を教えてもらうのだ。


すると俺が山の主を探し出した辺りから山が感じが変わった。
ふと目を逸らせばそこには猪の姿をした主が居た。

「お前が主か」

そう言うと主は恭しく頭を下げるとすぐに頭を上げ俺と主、視線と視線が合わさる。すると一瞬にしてこの山の事情が手に取るように分かった。
俺はそれを確認してから主に「ありがたい」と伝えた。
すると主は役目は終わったと言う様にのそりのそりと山の奥へと姿を消した。


俺が主と対面している間小太郎は木の上からその様子を見ていた。主が姿を消すと小太郎は俺の元へと来て、今のは一体何なんだというような視線を送ってきた。


「あれはこの山の主だ。この山の均衡を任せている。」


一応答えるが小太郎は分からず難しい表情をした。「別にお前は分からなくていい」そう言って俺は小太郎の頭をぽんぽんと叩いた。


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