目が覚めるとそこはお花畑でした・・・・・・・・・・って

「マジですかいな」

ぼそりと呟いた私はこの今の自分の状況にただただ驚くことしか出来なかった。
むくり、と上半身だけを起き上がらせると、すぐそばでは川流れており、見渡す限りの花畑に私は二度吃驚した。
これが俗に言う三途の川というものか……頬を抓ると痛みを感じる……。
死んでも痛みって感じるんだーなんて暢気に考えていると不意に後ろから「そこの人」と誰かに話しかけられた。
「そこの人」と言うのは私の事だろうか?そう思いながらもくるりと首だけを後ろに向けるとそこには見目麗しい男性が立っていた。
初めてみる完璧なほどに美しい男の人に私の目は釘付けになった。
目の前で全く動かなくなった私を見てその男性は私の目の前で「大丈夫か?」なんて言って手を上下に振った。


「あ、はい。大丈夫です」
なんとか声を出して言うとその人は「良かった」と言って私の目の高さになるようにしゃがみ込んだ。
何をするのかと思えばその人は私の両手を自身の手で包みこみ、暫くそうしていると、下を向いていた頭を私に向けた。

「名前は山神大和で合ってるな」
なんで私の名前を!?なんて思ったがそこは何故か冷静で「あ、はい」なんて似たような返答をした。
「分かってると思うがお前は死んだ」


「死んだ」その言葉が耳に入ると同時に体が固まったように感じられた。自分では死んでいたというのには分かっていた。だが心のどこかでまだ死んでないのではないか?という考えがあった。
しかし、こうして見知らぬ男性に死んだと伝えられると、嫌でも自分は死んだということを理解しないといけなくなる。
私は静かに首を横に振った。

目の前の男性は辛そうに「ごめんな」と言って私を抱え込んだ。「全ては俺達が悪いんだ。ごめんな」と。
私はわけが分からなかった。どうしてその人が謝るのか、どうしてこの人は私の事を知っているのか。一体私はどうしたのか。
気が付いたら自分の瞳から涙が流れていた。泣く気配は無かった。しかし気が付いたら泣いていた。

私は現実を受け入れたくなくてただ首を横に振っていた。
目の前の男の人は苦しげな表情を浮かべゆっくりと説明してくれた。
その人が言うに、ここは死後の世界で私が死んだことには間違いないと。なぜこの人が謝っているのかというと、それは何故私が死んだのかと言うことに繋がる。
この人は俗に言う「神」と呼ばれる類のものだと。神には様々な者が居て、この男性は空を司る神だと言う。まるで御伽噺か嘘みたいな話しだが私は信じた。信じなければなにかが終わってしまうように思えたから。

神は空、海、大地で成り立っている。三人が頂点に立ち、その下に火、水、雷、風、土、が居る。
実は私が死んだ原因となった地震こそが大地の神の死だった。神の死が自分の死でもあるなんておかしな話だと思った。だけど、神も死ぬんだな、なんて思ったら少し心が楽になった気がした。神だって死ぬんだ、自分だっていつか死ぬはずだったもの、そう考えれば少し心が軽くなった。

だが問題はここからでこの空の神だかなんだかが私のこれからが左右される話しが出た。


「大和に大地の神になって欲しいんだ」

本当に馬鹿げている話だと思った。

「なんで私なの?」そう質問すれば私の心臓の辺りを指差し「そこに大地の神が居るからだ」だとという。訳が分からない。そう言えばなんと奇妙な話に飛んだ。

なんでも自分が死んだ時にぶつかって来たあの物体こそが大地の神のいわゆる魂といわれるもので、こうして神が死んだ時は手当たりしだい生きているものに入る事になる。
神の魂だけでは世界の均衡が保てなくなるから。しかし、私の中に入り神になるという前に運悪く私はその直後に死んだ。
だが、大地の神は今私の中に入っていると言う。どうやら私が死んだところで神が死んだことにはならないらしい。私の中に入った大地の神は前の大地の神ではない。新しい命を私の中に植えつけたと言ってもおかしくは無い。私の中には例えるならば大地の神の赤ちゃんが居るというような感じだ。

「じゃあ私はどちらにせよ自分の居た世界では生きられなかったってことだね」

神が中に入らなくても私は死んでいた。もし生きていたとしても神が入ってきたことにより私は普通の人間ではなくなってしまった。

だったら答えは一つしかない。


「いいよ」
そう言えば驚いた表情のその人。どうやら責められたり、さっき以上に泣き出されると思っていたらしく、それが簡単に終わってしまって拍子抜けしたようだ。

「本当にか!?」
「どうせ大地の神になるしか道はないんだしね。」

さらりと言えば神はがくりとその場で全身の力を抜き、全てを吐き出すような溜め息をついた。
そんな神らしくもない姿に私は軽く笑って神の肩をぽんっと叩いた。


「今まではさ、動物とかが多くてさ、前に人間だった時はその人凄く怖かったから今回もそうなのかと思ったんだよ」
「前ってことは私の前にも人間から神になった人いたんだね」

私以外にもそういう人がいたのだと言うことに驚いた。是非ともその人の話を聞いてみたいね。
・・・と言うかそもそも


「神ってそんな頻繁に死ぬものなの?」
私がそう言えば神の肩がぴくりと揺れた。その姿を見て、嗚呼なんか地雷を踏んだなと自分で気が付いた。

「いやぁ・・・・」
誤魔化す様に首を傾げる神をぎろりと睨めば、神は小さな悲鳴を洩らして「分かった分かった」と言ってまた話し出した。

「神は死ぬなんて勿論そんなに無いことだ。あったらそのたびに何かと大変な事が起こるしな。だが、大地の神は他の神に比べて死ぬ確率がぐんと高い。」
「どうして?」
「大地の神はここにある全ての大地をその身に宿すのと同じ、山が死ねば大地の神の生気が削られる、焼かれても然り。」
「・・・・・」
「大地に生きるものが居る限り、火や水がある限りそれは続く。」
「つまりそれは大地の神は自分を犠牲にして大地を成り立たせているわけね?」
「そうだ。これから大地の神になる者にこの話しは酷だろう。しかしどうか悲観しないで欲しい。大地の神はその身をもってこの国を守っている立派な神なんだ。どうか誇りを持って欲しい。」
「別に悲観はしていないよ大丈夫だから」
「ありがとう。何かあったらすぐに呼んでくれ。我々神は物事は大地の神を優先することになっている。」
「・・・分かった。」

そこで、神は思い出したかのように別の話をし始めた。
一体なんだと言う!こっちは今までの話をまとめたり考えたりするので精一杯だと言うのに!!さっきだってもう自分なんてどうにでもなってしまえ!みたいな考えで適当に返事してただけなんだからさ!!


「神になったらまず、生物学的に雄になる。」
「はぁ?」
「それと感情と言うものが麻痺する」
「はい??」
「以上だ」

さっぱり分けの分からない!男になる?感情が麻痺する?どこの小説ですか??

「大変だろうけど頑張ってくれ」
「えっ、ちょっ!」

私が神に質問しようとした時だった。
私の座っている地面に深い穴が出来、私はその穴に一直線に落ちていった。
落ちながら私は2回目の死を覚悟した。

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