事が起こったのはその日の夜。
明らかにこちらに向けられている気配に中々寝れない中、小太郎がすっ、と姿を消しどこかへ行った。
小太郎もこの気配に気が付いていたのか、そう思い俺は小太郎の居なくなった部屋にで一人天井を眺めていた。


視線をキョロキョロと動かし、俺は「何をしている」と天井に声をかけた。
俺が話しかけたのは一番の元凶である気配の持ち主佐助だった。
佐助は天井から姿を現し俺の前に降り立つと「やっぱりあんたは俺様の気配わかるんだ」と言って両手に持っている手裏剣をくるくると回した。


そんな佐助を横になりながら見ていると佐助は一歩一歩俺に近づいてきた。
その佐助の表情は怒りに満ちていた。その佐助の口から


「ねぇ、今風魔は俺様の結構な数の分身と戦ってるんだけどどっちが勝つと思う?」
という質問が俺に投げられた。

俺は即答で「小太郎だろうな」と言った。
分身と本体じゃ本体が勝つに決まっている。と頭の中で冷静に考えて。
俺がそう言うと佐助は顔を歪め。「ふーーん、そう」と呟いた。


「じゃあ今の状況どう思う?」
馬鹿にするように俺に言う佐助に俺は「どう、とは?」と返す。


「風魔は俺様の分身と戦っている。今は前みたいに風魔が助けてくれる事は出来ない。つまりあんたは俺様と戦っていうこと。そのことについてどう思う?ねぇ。」
俺を見ながら一気に話した佐助。随分とおしゃべりだな。


「別になんとも思わないさ」
今度もなんとも短い返事で佐助に返すと、佐助は足で床をダンッと叩いた。まるで怒りの全てを床相手に解消するかのように。


そう考えた時、すっ、と佐助が動いた。それに気が付いていたが俺は別に動く気がなかったのでそのまま佐助の行動を見る。
佐助は顔を歪めたまま俺に近づき横になっている俺の胸倉を掴み強引に俺の唇を奪った。


重なる唇と唇。小太郎以外のキスは初めてだったので佐助の唇はこんな感じなのかと、なんともおかしな考えを頭の中でしていると
佐助は唇を離し、泣きそうな顔をしながら「ねぇ、今どんな気持ち?」と聞いてきた。


なんだか今日は佐助の質問が多いな。なんて思いながら「別に何とも」と言うと、今度は俺の顔面を佐助が思いっきり殴った。
ガツッという音をたててぶつかる頬と佐助の手。痛みは特になかった。
俺は一体何が起きたんだろうか?という風に佐助を見ると、佐助は「そうやってあんたはいつも無表情で」と言って今度は俺の胸倉から手を外し床に俺の上半身を叩き付けた。


「佐助落ち着け」


とりあえず佐助にそう言ってみるが、佐助は「五月蝿い」と俺を怒鳴った。
本当に今日の佐助は何がしたいのか良く分からない。


「どうせあんたは何も知らないんだ。そうだよ知るわけ無いじゃん。俺様の気持ちなんかさ」
そう言いながら自嘲気味に笑う佐助。自分の髪両手でぐしゃぐしゃと掻き乱し、そのまま佐助は俺の胸元に顔を埋めた。


とりあえずヘタなことをして佐助にまた怒鳴られるとあれだからそのままにしていると、佐助は両手に再び手裏剣を構え
ふらり、と立ち上がった。
何をするのかと佐助を見ていると佐助はその手裏剣で俺の足首の腱の辺りを斬った。肉が切れるいい音が小屋に響き、それと同時に血が吹き上げた。

まさか足を斬るとは思っても居なかった俺は思わず「ほぉ」と呟いた。
その呟きを聞いて佐助が「「ほぉ」じゃないでしょ?斬ったんだよ?足の腱を斬ったんだよ?苦しむとか俺様を睨むとか出来ないわけ?」
と半ば半ギレで俺に言う。


「と言われてもな」
痛くもない、特に何も感じない俺はどうする事も出来ず、とりあえず佐助を見た。
その時だった、山の空気が変わった。ざわり、という効果音をつけて。
何事かと山を感じると、原因は俺の血だった。俺の血が床から大地に流れ、山、大地が怒っているのだ。俺が血を流したことに。
これは、少し佐助が危ないかもしれないな。なんて考えて俺は立ち上がろうと両足に力を入れた。
が、勿論立てるはずが無い。
横で佐助が「立てるわけないじゃん」と言っているのを無視し俺は上半身だけ起き上がらせると、すっと目を閉じた。
すると傷口がすっと、治っていった。それはほんの一瞬の事だった。

佐助は「なっ!」と言って俺を見た。
俺はまた両足に力を入れ立ち上がる。佐助を見上げる側から見下ろす側に変わった。


「傷が一瞬で治った!?」と驚く佐助を横目に俺は外へと向かった、が、佐助がそんな俺を制す。

「簡単に外に逃がすわけ無いでしょ?」
そう言う佐助。俺は逃げるわけではない。逃げるのではなく大地に用があるのだ。
一体誰の為に俺がこうして立って外に行こうとしてると思ってるんだ。このままでは確実に佐助は死ぬぞ?


……とは言わずに俺は、だったら、と言って俺は自分の足場となっている床を右足で思いきり叩いた。佐助以上の音がなり、家がピシピシと音を出してひびが入っていくのを見た。
佐助は唖然としてその光景を見た。
神の力も作用し、家は綺麗に床から天井までひびが入りがらがらと音を立てて崩れていった。
元々あまり大きくはなかった小屋はあっという間に見るも無残な姿となり俺と佐助の周りは小屋の瓦礫と外の風景が広がっていた。



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