あれから佐助は俺と小太郎の居る小屋へと足を運んだ。
一人でよくもまぁ飽きずに来るもんだ。
へらへらと笑いながら話しかけ俺の事を聞き出そうとしたり探索しているようだがきっと俺から得られる情報なんて一人握りも無いだろうに。
いくら知らないと言っても佐助は聞く耳も持たない。
それと佐助は俺が大地の神だということを信じていない。別に信じようが信じまいが佐助次第、気にはしていない。きっと俺は頭を打ったおかしな人と認識されているだろう。絶対。
だったら俺に話を聞こうという事をするなと言いたくなる。面倒だ。


ふらりと現れふらりと消え去る佐助に小太郎はどこか苛ついているようだった。どうやら小太郎は佐助があまり好きではないらしい。


俺はこのところ気分が良く、体が動かなくなったり倒れたりすることがなくなってきた。手をぐっぐっと握り締め力が入るかどうか確かめるようにする。
すると腕の筋肉が盛り上がり、触れてみると筋肉の硬さが分かった。
俺はこの世界に来てから力が強くなったらしくどれほどのものかとためしに近くの岩を叩いてみるもいとも簡単に岩を叩き割ってしまった。
その岩を見ながら「あ」と声を洩らして慌てて修復したのは最近の記憶だ。


あまり力を入れすぎるとこの小屋を壊してしまうのであまり力を入れないように、ゆっくりと生活していた。
そもそも大体の仕事は小太郎がやってくれるので俺はあまり動くことも仕事をする事も無いがな。あるとしたら大地の神としても仕事だな。


そして今日もゆっくりのんびりと小屋の中で横になっていると俺の横に霧のように佐助が現れた。噂をすればなんとやらか。
しかも佐助は小太郎が居ない時に来るというなんとも良いタイミングで来る。


「今日も来ちゃった」


なんて笑顔で言う佐助に俺は「ああ」と短く返事すると目を閉じた。


「ちょっと!何で俺様来たら寝るのさ!」


鋭いツッコミを佐助から貰い、面倒くさいながらも佐助に「悪いのか?」と聞く。
佐助が間髪入れずに「悪いよ!」と言ってきたのは無視しよう。


「大体大和はいっつも俺様来るとそうやって寝ようとして!なんなのさ!!」


と横で佐助が言っているが、別に佐助が来たから寝るわけでは無い。寝ようとしたタイミングに佐助が来るんだ。
しかしそう言うのも面倒なので何も言わないで佐助を見ると、「何か言ってよ!」と騒がれる。
俺は「はいはい」と流すと「じゃあ」と言って佐助を見た。


「俺と一緒に寝るか?」


首を傾げるように言えば佐助は顔を赤くさせてぴしり、と動きを止め首を横に振った。
おかしいな、こうして言えば小太郎は俺と一緒に寝てくれるんだが……。
頭にクエスチョンマークを乗せながら考えるがすぐに、まぁいいか、と考えるのをやめた。


佐助は俺の横で胡坐をかいて座り、俺の顔を見てきた。
佐助の視線を無視すると今度は口を開いて「風魔の気持ちも分からないわけじゃないんだけどさー」と呟いていた。
それはほんとに小さな呟きだった、俺の耳を持ってやっと聞こえるくらいに。


その呟きに「何がだ?」と聞くと、佐助は驚いた顔をして「地獄耳!」と叫んだ。なぜ一々叫ぶのか訳が分からない。


そんな事をしてから俺はむくり、と上半身だけ起き上がらせた。
いきなり目の前で俺が起き上がったことに対して驚いている佐助が目の端に映った。
しかしすぐに分かったらしく、瞳が大きく開き俺の右側を凝視した。その佐助の凝視しているあたりから黒い羽がはらりはらりと舞い降り、そこから小太郎が現れる。


俺は佐助を殺ろうとする小太郎の腕を掴み俺の隣に座らせた。無理やりにも見えるその行動。勿論無理やりだ。
佐助が来るといつも態度が露になって殺気立つ。だから俺は小太郎を慰めるように肩を寄せ頭を撫でる。
すると小太郎は安心したように俺に体重をかけた。
俺はよしよしと言うように頭を撫で終え、再び佐助と向き合った。


「ここ数日間の俺はどうだった佐助」
俺の言葉に佐助は俺を凝視する


「つまらないだろう?だからもうここに来るのは止めてくれないか?」
と、言うと佐助はぐっ、と目を広げた。そして「なんで?」とお得意のへらへらとした表情で聞いていた。
しかしその表情は目が全然笑ってないだけの滑稽な表情だった。


「お前が来るとどうも小太郎が殺気立つ。それだけだ」
それに佐助もそんな暇じゃないだろうしな。という最後の言葉までは口が回らなかった。
それを聞いて佐助は酷く悲しい顔をした。忍びもやはり人間なのか、今までの中で一番人間臭い顔だった。


佐助はそのまま「そう」と言って霧の様に消えてしまった。佐助が何であんな表情をしたのか良く分からないまま。
佐助が居なくなった後無駄に小太郎の機嫌が良かったのか気のせいか?



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