(佐助視点)


「ところでなんの用だ佐助」


話を振られた俺様は殺気を飛ばしてくる風魔を感じながら男を見た。
男は風魔に支えてもらっていた体を自分で支え、胡坐をかきながら座っている。


「そんな簡単に言うと思う?」
と、馬鹿にしたように話せば男の横に座っている風魔が刀を構えた。
普段というか、風魔がこんなにも感情を見せるのは初めてだったため正直俺は困惑していた。


そんな俺様達を横目に男は「思わないね」と言った。
何なんだこいつは!だったら言うな!
男の良く分からない言動に思わず顔の笑みが崩れそうになる。


「用があるのは小太郎にだろう?」
「そうだけどさっきあんたも標的にしたよ」
「ほう」


男は無表情で淡々と言葉を出していた。
忍びとしては人の感情を表情で読み取ったり声を聞いたりして分かったりするものだけどこの男はさっぱり分からない。
何を考えているのかも分からない。何がしたいのかも分からない。俺はそんな男に苛立ちを隠せなかった。


「まぁ佐助、そんな怖い顔してくれるな」
「っ!」


最悪だ。別に表情を崩したわけじゃなかった。いつもみたいにへらへら敵を惑わすような笑みを浮かべたままだった。なんでこいつは簡単にも俺様の表情をよんだ。つまり感情を掴んでしまったんだ。


さっきから俺様これでも忍びの長だよ?それなのにことごとくこいつにはそれが通用しない。まるで忍びであっても普通の人間に対して話をするような男の態度。
気配も感じ取れず、男に臆し、男の感情を読み取るよりも先に俺様感情を読み取られ・・・俺様泣きそう。
まるで自分が駄目な忍びみたいに思えてくる。


「ねぇ、あんた何者なの」
息を吐き出すように言った言葉。に男は「大和だ」と短く言った。「大和?」と聞き返せば「俺の名前だ」と返ってくる。


そういう態度も気に食わない。忍び以前に見知らぬ人に簡単に名前を教えるなんて。
いや、それよりも何故俺様の名前を知っていた?まさか風魔が俺様のことを話したのか?


「なぁあんた」
「だから大和だと言っているだろう」


ああ、苛々する。


「なんで俺様の名前分かったの?風魔から聞いた?」
言えば、風魔は首を横に振る。では風魔は教えていない。ならば何故だ。俺は男からの返答を待った。


「俺が佐助を知っていたからだよ」


俺様を知っていた!?どこからの情報だ。もしかしてこの男忍びなのか!?
話せば話すほどに分からないこの男。今は風魔も居るということでヘタな動きもとれない。いや動けないのは風魔のせいだけではなかった。
この大和とか言う男が俺様を見る。それだけで俺は動けなくなる。異様な雰囲気に飲み込まれそうになる。この男只者ではない。


「質問は終わりか」

黙っていると男が話しかけてきた。
その言葉に俺は「まだ話したいことはたくさんあるんだけどねー」とだらけた口調で話した。


「ならば言えばいい」
簡潔に纏められている男の言葉に俺は「じゃあ」と言っていくつか質問を考えた。


「あんた・・・じゃないね、大和と風魔の関係は?」
「猫と飼い主」
「いや、そうじゃなくて!何で風魔は大和にべったりなのかって事。」
もしかして恋?とニヤニヤ笑いながら聞けば、男は風魔の方を見た。風魔は表情を変えるわけでもなく、しばらく考えてから縦に頷いた。


「嘘ーーーーーーー!!!」
これには吃驚した。風魔が恋!?冗談半分に聞いたこの質問に本気で返された俺様はどうしたらいいんだ!
男はそんな風魔に「そうだったのか」と首だけを風魔の方に向け、別に気にする風でもなく言った。風魔も素直にこくり、と頭を下げている。


そんな静かな二人に一人騒いでいる俺様馬鹿みたいだ。いや、今は風魔の恋事情なんてどうでもいい。
俺はすぐに気持ちを建て直し男を見た。


「一番気になる事、さっきも言ったけど話を変えられたからもう一度聞く。大和は、何者?」
真顔になってそう聞けば目の前の大和は今まで無表情だった表情を変えた。目をすっと細めて緑の瞳で俺様を見る。そんな表情の変化に俺は釘付けになった。


「小太郎にも同じような質問をされたな」
「風魔も?じゃあ、その時大和はなんて答えたのさ」
「大地の神」
「はい!?」


今まで得体の知れないこいつに心のどこかでは存在を上に考えていたが、今の発言を聞いてこいつはもしかしたら頭のおかしな奴なのでは無いか?という考えが頭に過ぎった。


「ほらな、小太郎と同じ反応だ」


どうやら風魔も俺様と同じ事を思ったらしい。
いやいや、だって普通思うでしょ。大地の神?神?ねぇあんた神馬鹿にしてんの?


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