スガ→←タク
20話派生話





「でも、本当にタクトくん無事で良かった……!」
「心配させてごめん」

ワコが無事に元気になったタクトを見て本当にホッとしたように胸を撫で下ろした。微かに潤んでいる瞳に気付いてタクトは申し訳なくなる。

「本当にもう大丈夫なの?」
「うん、……ありがとう」

本当に心から心配してくれたことが不思議と嬉しかった。
そんな二人を少し離れて見守っていたスガタはゆっくりと近付き、タクトの肩を掴んだ。

「──スガタ?」
「ちょっと来て」

言われるがままにタクトはワコに暫しの別れを告げ、スガタに手を引かれて歩き出した。
タクトは付いてきたはいいもののスガタの全く見えない表情に若干の不安を感じていた。

(スガタ、怒ってるのか──?)

言葉にしようとしたが、その言葉を発するのが怖くてタクトは口を閉じた。

「タクト」
「──どうしたんだ、急に」

出来る限り平静を装って何でもないことのようにやり過ごそうとタクトは笑ってそう言うが、スガタは厳しい表情を緩めることはなかった。ただスガタの金色の瞳に見つめられると何もかも見透かされそうでタクトはそっと目を逸らした。

「……心配した」
「ス、ガタ?」
予想していなかった言葉に顔を上げるとすぐ近くにあるスガタの辛そうな表情に目を見張った。

「心配、した」
「ごめん……そのスガタ?」

さっきとは逆にスガタが顔を見られたくないのか顔を逸らしてしまう。そんな風に少し子供っぽくも見えるスガタの行動がとても新鮮でタクトは笑ってしまった。

「別にタクトを信じてない訳じゃないんだ──だけど」

言おうか戸惑っているのかスガタは少し口を閉じた。

「怖かったんだ、タクトが……死んでしまうかもしれないと思ったら」
「……スガタ、僕は」

タクトが強いのもスガタには分かっていた、信じていた。それでもふとした瞬間に人間は死んでしまう、どんなに強い人間だって。
そんな当然なことに気付いた瞬間スガタは恐ろしくなった。そして、戦っているタクトを見ていることしか出来ない自分の無力さに打ちのめされた。

「僕は、タクトやワコのことを」

守りたい、そう何度思ったことだろうか。そう思う度に変えようもない事実がただスガタを苦しめた。

「大丈夫、絶対守るから……絶対に二人を」

違う、タクトにそんなことを言わせたかったんじゃない。
やりたいことをやろうと前を向いているタクトは見ていてスガタにはとても眩しく映った。自分にはない輝きだった。

「絶対に守るから」

僕がタクトを心配したのは僕たちを守ってくれる、自由にしてくれる存在がいなくなるかもしれないという恐怖からじゃない。

「だから、僕は絶対に負けないよ」

タクトの絶対という言葉には願望ではなく決意が込められていた。そして、それを成し遂げるだけの力が確かにタクトにはある。

なのに、何故こんなにも怖いのだろう

「二人に色んな世界を見て欲しいんだ……きっと綺麗な物ばかりじゃないけどきっとスガタとワコなら大丈夫だから」

タクトはどこか遠くを見つめながらそう言った。
スガタの返事を求めている訳でもなく、ただタクトは淡々と話した。まるで、遺言でも聞いているような気分だった。

「おいしい物もたくさんあるし、楽しいこともきっとたくさんある」

タクトの語る未来にタクト自身はいるのだろうか。明るく楽しそうに話すタクトの横顔が霞んで見えた。

「僕を信じて」

「タクト」

タクトの赤い瞳から目が離せなかった。その綺麗な瞳を細めてタクトはいつものように笑った。その笑顔が眩しくてただ心が痛くて、本当の気持ちなんて言えやしなかった。

君を守りたいだなんてそんなこと







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