▼ヘド←タク←スガ←ヘド ▽一応美大生パロ ※スガタ←ヘッド要素があるので苦手な方はご注意下さい 「タクトの指って綺麗だな」 「え、急にどうしたの?スガタ」 隣で真剣な表情で手を動かしているタクトを見つめながら呟かれたスガタの一言に言われた当の本人は驚いたように目を見開いている。 「冗談だよ」 「これ今日中に終わらせなきゃいけないんだから」 邪魔をするなと拗ねたように言う彼はどこか実年齢より幼く見えた。 しかし、タクトの指が綺麗だと思ったのは本当のことだった。だが、本当のことは言えずに胸の奥にしまってスガタは真剣なタクトの横顔を小さく微笑みながら静かに見つめた。 彼のことを好きになったのはいつだったのだろうか―― 今思えば出会った時から恋に落ちてたのかもしれない、とスガタは初めて出会った時の彼の横顔を思い出して俯いた。 「今日は会えたのか?」 「え、あぁ…その……」 「会えなかったのか」 スガタはいつもタクトが会うことを楽しみにしている“あの人”を知っていた。多分、タクトが思っている以上に。 「名前も知らないんだろ、迂闊に近付かない方がいいと思うけど」 「な、名前は知らないけど……」 はっきりとしたスガタの指摘にタクトは困ったように眉尻を下げながらも必死に弁解でもするように言い募る。 「優しい人、だよ」 「その人に何してもらったか知らないけど、そんなに簡単に人を信じてたら危ないよ」 「でも、本当にっ……!」 勢いよく椅子から立ち上がってスガタに反論しようとするが、タクトは何と言い返せばいいか分からずに静かに肩を落とした。 スガタはそんな彼のいつもと違う弱々しい様子に無意識に眉間に皺をよせた。 タクトは“あの人”に会ってからいつもこんな調子だった。以前と変わらぬ笑顔でこちらを見てくるのにふとした時に切ない表情で誰かを思い出しているような顔をする。 そして、スガタはその誰かを知っていた。あんな男、と思っても口には出せなかった。何より忠告するように時々零す苦言も恋に夢中な彼には届きはしないだろう。 タクトは知らない。“あの人”がどんな男か 「やあ、今日も来てくれたのか」 「……」 夕陽の射し込む部屋に佇む青年にスガタは嫌悪感を露わにして目を背けた。 男はそんなスガタの分かり易い行動に小さく笑ってそこの椅子に座るよう促した。 「不機嫌だね」 「いつもと同じですよ」 「そうだな、君はいつも不機嫌そうに座っている」 スガタに視線を向けて愛おしいものを見るようにうっすらと目を細めて男は手を動かす。 「もし、彼に手を出したら君はどうするのかな」 「……何のことですか?」 「君は案外分かり易いね」 スガタの怒りに満ちた低い声にも男は楽しそうに笑っている。そして、絵を描いていた手を止めゆっくりとスガタへ近付いていく。 ただ静かに睨み付けてくるスガタに益々楽しそうに笑う男は何とも不気味で不愉快に映った。 スガタはタクトは何故こんな男を、と考えて唇を噛んだ。 「いつもの君の取り繕ったような笑顔よりそういう顔の方がずっといい」 スッと伸ばしてくる手をとっさにスガタは弾いた。とっさの行動でスガタ自身驚いていたのだが、男はそれでもまだ楽しそうだった。 「君が大好きな彼はきっとこんな風に触られそうになっても抵抗なんてしないんだろうね」 だって、彼はこんな男に恋してる この男は全部分かっているのだ。 僕がタクトのことを好きなことも、そのタクトが彼に惹かれていることも―― 全て理解した上でまるで弄ぶかのように引っ掻き回すのだ。 「こんな男に恋してる彼を哀れだと思うかい?」 「……黙れ」 押し殺すような低い声で怒りを露わにしているスガタを男はただ愛しいものでも見るかのように微笑んで見つめていた。 「でも、きっと一番哀れなのはそんな彼を見ていることしか出来ない君だよ」 「違う、僕はっ……!」 切羽詰まった苦しげなスガタの叫ぶような訴えを聞き流して男は話を続ける。 「彼はとても単純で、純粋だね。君とは正反対だ」 「……何が言いたい」 男は急かすスガタの声におどけるように肩を竦めた。 「彼も君もとても美しいってことだよ」 男の表情も考えもスガタには全く読むことが出来ずにただもやもやとした物を抱えていた。 スガタにはそういった男の掴みどころのないこの世の者ではないような雰囲気が嫌いだった。 「恋をしている者は誰だって美しい、でもその中でも特に美しいのは恋に苦しんでいる者だと常々思っているんだ」 「悪趣味だな」 「まぁ、今までこの話をして理解してもらえたことはないね」 仕方ないとずっと昔に諦めていたのか男は否定されることすら辛いことではないという風情で微笑んでいる。 「君はとても美しい、そんな君のことが好きだよ」 「僕は嫌いだ」 「それでいい。君が俺を好きになったら君をこうまで好きではいられないだろうから」 男の言うことはあまりに意味不明でスガタははぐらかされているのだろうかとすら思い始めていた。 好きな人に自分を好きになってもらえたら嬉しいに決まっているのに、この男は笑いながらおかしなことを言う。自分であれば、あの赤い綺麗で真っ直ぐな瞳が自分だけを見てくるのを想像しただけで嬉しくて仕方なくなる――こう思うのは子供なのだろうか、そこまで考えてスガタは視線を感じて顔を上げた。 「君にはわからないよ、きっと。君もまた真っ直ぐなのかもしれないな」 よくわからない男の言葉はよくわからないながらに耳障りが良く耳に自然と入ってくる。 「要するに、彼のことが好きで好きで仕方なくて苦しんでいる君が好きってことかな」 「やっぱり、悪趣味だな」 よくわからないことばかり言う男の言うことで唯一スガタに理解出来たことはこの男がろくでなしだということだけだった。 ろくでなしの恋 ――――――――― ヘッド×(スガタク)という表現が正しい気がしてきた ヘッドが電波だな…… |