★5000hit企画 ▽麻芽様リクエスト ▽夜間飛行のメンバーで海水浴+α ※かなり捏造設定 お昼休みにいつもの三人でのんびりしていた時だった。 急に一年の教室に入ってきたサリナによってそのいつもと変わらぬのんびりとした時間は見事に終わりを告げた。 「海水浴に行こう!」 「か、海水浴ですか?」 唐突過ぎるサリナの提案に一番近くで聞いていたワコが目をぱちくりさせて聞き返す。 「そう、夜間飛行のメンバーの親睦を深めようと思ってね」 「今更じゃないですか」 タクト以外は既にそこそこ長い付き合いであるというのに何を今更という気持ちでスガタがそう言うと、サリナはその発言に演技がかった身振りで反応する。 「それなんだよ、諸君」 「は?」 サリナが大きく頷きながら腕を組み話し始める。それを三人はただぼんやりと見上げることしか出来なかった。 「私達は長い付き合いではあるが、それにタクトくんが入った」 「え、僕ですか」 一人メロンパンを食べることに集中していたタクトは突然上がった自分の名前に驚いて顔を上げると、サリナに強く肩を掴まれた。 「つまり、タクトくんともっと親睦を深めるべきだと思う訳だ!」 そのサリナの言葉にスガタとタクトは何を言っているのかという表情だったが、正反対にワコは目をキラキラと輝かせてサリナを尊敬の眼差しで見つめていた。よく分からないが、スガタとタクトはそんな彼女の表情を見て顔を見合わせてこれはもう仕方ないなと苦笑いした。 そして、海水浴へ行く日程などを話し合う彼らはすぐ近くの席でその会話に静かに耳をすませていた者がいたことには気付かなかった。 ****** 「いい天気で良かった」 「そうだな」 ワコとスガタは一緒に約束の場所で待っていた。ジャガー達は遅れて来るらしいのでとりあえず寮組であるタクトとサリナを待っていた。 しかし、海水浴とは言っても場所はとても見慣れた砂浜だ。大体この島の住民は海自体見慣れているのでわざわざ海水浴をしようと思う者はあまりいない。 スガタ自身も初めてだと言ってもいいだろう。観光客はそれなりに来ているが、島民は恐らく自分達しかいないだろう。 そこまで考えていた時、聞き慣れた声がした。 「スガタ、ワコ!おまたせ」 「早いな、二人共」 そう言って現れたのはタクトとサリナだった。その二人の後ろから着いてきたジャガーとタイガーに案内してもらってきたらしい。 「とりあえず着替えてくるとするか」 サリナの言葉に従い、それぞれ男女に別れ更衣室へ向かう。 「――どうした、タクト」 流石に早く着替え終えた男子二人は女性陣を待つ為二人でのんびりしていた。 すると、スガタはふと隣から視線を感じてタクトに不思議そうに声を掛けた。 「……いや、意外と筋肉すごいんだなって」 羨ましそうというより憎らしいとでも言わんばかりの視線にスガタは思わず苦笑いしていると、ワコの楽しそうな声がしてくるのが聞こえた。 「なあに、見つめ合ってるのかな?」 やらしいとやけに楽しそうな声でワコに言われ、タクトは何でそうなるのかと肩を落とした。 それぞれ自分達の個性に合わせた水着を着ていて似合っているとタクトは思ったが、あまりジロジロ見るのも悪いかと思い視線を海に移した。 そこには大変見覚えのある人物がいた。 「あ、あれって……」 「ワタナベさん?」 正確に言うとカナコだけではなかった。いつも彼女と一緒にいるシモーヌとタカシもいる。 「すっごい目立ってるな……」 「流石だね」 タクトとワコはまさに注目の的といった感じのカナコに呆然としていた。 「あら、こんな所で会うと思わなかったわ」 「どうもー」 白々しさすら感じるカナコの言葉に苦笑いしていると、ワコが意外そうな声をあげた。 「あれ、意外な組み合わせだね」 そんなワコの声にカナコの後ろをよく見るとケイトが機嫌の悪そうな表情で眼鏡を押し上げていた。 「誘われたので」 「……よく言うわ」 ケイトのきっぱりとした言葉にカナコはボソッと本音を零した。元はと言えば誘ってきたのは彼女の方からだったのに澄ました表情で嘯くケイトにカナコは小さく溜め息を吐いた。 この普段は冷静で優等生な委員長様は彼のこととなると手段を選ばない傾向があるのをカナコは知っていた。 そして、そんな彼が今目の前にいるのに機嫌がよろしくない理由も残念ながら分かってしまっていた。 「――タクト、一緒に泳ぐか」 「おぉ、遠泳か!いいなぁ」 スガタはどうせだから楽しもうという気持ちはあるらしくタクトを誘う。それを近くで聞いていたワコはもう少し違う物やった方が楽しいのではないかと思うが、この美少年二人は見た目によらず体力バカな面もあるらしくとても楽しそうだった。 ――少し離れた位置で見ていたカナコ達から見てもそれは実に楽しそうで、スガタがタクトに笑いかけている様はまさに青春という感じだ。しかし、カナコの隣で無言でそれを見ていたケイトは小さく舌打ちしていた。 「嫉妬する位なら話しかければいいのに」 「何か言いましたか、ワタナベさん」 カナコのストレートな言葉が少し効いたのかケイトはムッとした顔をするが、すぐに険しい表情で睨み付けた。 恋する乙女は怖いわね、と控えめに立っていたシモーヌに言うと淡々と相槌を返された。 ***** 「――遠泳はみんなの親睦に繋がらないので却下」 「えぇ、そうですか?」 スガタと遠泳する気満々だったタクトだったが、ここに来た理由をサリナに諭され、渋々ではあるが納得したのか頷いた。 サリナは心の中で今更タクトとスガタだけで更に親睦を深められてもね、と思ったがそれは一応口にはしなかった。 「じゃあ、何します?」 「こういう時は――」 スガタの質問にサリナは悩んでいるようで腕を組んで固まっている。それにジャガーやタイガーは色々案を出していく。だが、どれもピンと来ないのかサリナは微妙な表情だ。 「そうだ!」 「ん、何か思い付いたのか?」 今まで黙っていたワコが声を上げてそれに集まっていた部員達は一体何だとワコに視線を送る。先を促すようにサリナがワコに言うとワコは楽しそうな笑顔で言い切った。 「何か食べようよ!」 こんな所に来てもワコは変わらないようで、とりあえずご飯ということらしい。まあ、誰も異議はないということなので屋台がある所までそれぞれ歩き出す。 「タクトくん何食べる?」 「ええと、じゃあかき氷にしようかな」 「じゃあ、僕もかき氷でいいよ」 味はおまかせにしてみる?というワコの提案に二人は頷いて出来上がりを待つことにした。 ***** 「で、タクトくんがイチゴでスガタくんがブルーハワイね」 「何か、面白いな」 渡されたかき氷の色に二人は顔を見合わせて苦笑いした。 「僕は逆でもいいけど」 「ん、いいよ。イチゴ好きだし」 スガタの言葉に深く考えることなく、タクトはそう返すが隣のワコはキラキラとした目でそんな二人のやりとりを見つめていた。 タクトはキーンと冷たいかき氷を口にしながら、ふともしかしてさっきのスガタの言葉はイチゴの方も食べたいという意味だったのだろうかとはっきり言って的外れな考えに思い当たった。 思い立ったら即行動という思いでタクトは隣でかき氷を食べているスガタにそっと訊ねた。 「スガタ、一口食べるか?」 タクトの突然の言葉にスガタは驚いたように目を見開いたが、すぐに笑って余裕の表情で返してくる。 「はい」 そのまま自然な様子でタクトがスガタに食べさせる。隣で見ていたワコの表情には気付いていないらしい二人は何でもないかのように感想を言って笑っている。 「天然コンビ、か」 ワコは目を細めて静かに二人を見つめてそう呟いた。 **** 「楽しかったね」 ワコの心からの感想にスガタとタクトは夕焼けの色に染まり初めている海を見つめて頷いた。 すっかり見慣れた海でこんなにも楽しく過ごせる日が来るなんて、スガタは実は考えたこともなかった。 当たり前にそこにあると思っていたものなのに、今はとても綺麗なものに見える。隣で座り込んでいるタクトの綺麗な横顔を盗み見て、スガタは小さく微笑んだ。 「やっぱり独占してた」 スガタは少し離れた所からやって来たサリナがタクトと話しているスガタを見て不満げに言った言葉を否定しつつ、こんな風に過ごせることの幸せを噛みしめた。 「これじゃ、スガタくんとタクトくんの親睦会だね」 「いいじゃないですか、とっても素敵だと思います!」 「ジャガー……」 スガタとタクトを見つめて呟いたワコの言葉にジャガーはキラキラと目を輝かせて胸の前で祈るように手を組んで喜んでいる。ジャガーが喜んでいる理由が分かってしまうタイガーはそっと溜め息を吐いた。 ――――――――― あとがき 麻芽さまへ ⇒リクエストありがとうございます、遅くなってしまいすみませんでした。 思ったより綺羅星の方々出せなくて申し訳ないです、せめてフィラメント三人組も出したかったんですが…… では、ありがとうございました! |