★5000hit企画 ▽アゲハ様リクエスト ▽スガタク♀でクラスメイトに嫉妬するスガタ (タクト←ヒロシ要素あり) ※女体化注意です 教室はいつもと変わらず生徒の声で溢れかえっていた。 タクトが帰り支度をしていた時、ふと人の気配を感じて顔を上げると満面の笑みを浮かべたルリが立っていた。 ワコの親友ということですぐに打ち解けた相手だし、何より素直に良い子だなとは思っている。 ――だが、この笑顔の時の彼女には出来るならば関わりたくないと思う。 明らかに何か企んでいるような笑顔に思わず椅子から立ち上がり、別れの挨拶を口にしたいと心の底から思ったが、口にはしなかった。 「ええと、どうかした?」 「今日は質問があって、ね」 体の後ろで手を組み、楽しそうに笑うルリにタクトは苦笑いした。 「ずばり、どういう男の子がタイプ?」 「え、えぇ……」 スッと顔を近付けて迫るようにストレートな言葉で何とも答え難いことを訊いてくるルリにタクトは顔を赤くして目を泳がせた。そんなタクトの様子にルリはチャンスと言わんばかりに更に詰め寄っていく。 「やっぱり、こんな美少女なんだし理想は高いのかな」 「そ、そんなことないって」 タクトはルリの言葉の両方を否定する。 しかし、タクトは本土からやって来た美少女としてかなり男子に注目されているのだが、本人は男子からの視線は周りの演劇部の面々への物だと思い込んでいる節がある。確かに彼女達への視線もあるが、それ以上に今タクトは注目されていた。 何より周りは演劇部という超高嶺の花に囲まれても霞まない辺り十分過ぎる程魅力的で可愛らしいと言えるのだが、 ルリはそんなタクトに小さく無自覚かと呆れたように呟いて肩を竦めた。 「じゃあ、どういう人がタイプなのかなあ?」 「……う、うーん」 タクトはどこか尋問されているかのような気持ちになりつつ真面目に答えようと考え込む。 すぐに浮かんだ人物に冷め始めていた頬が一気に熱くなるのを感じてルリに見られないように窓の外に視線を逸らした。 しかし、ルリは見事に見抜き、ニヤニヤとタクトの顔を覗き込んでくる。 「誰か想像しちゃったりした?」 「し、してない!してない!」 必死で否定すればする程更に肯定しているようにしか見えないのだが、タクトは更に耳まで赤くして否定する。 「ふーむ、じゃあ……」 ルリは考え込むように腕を組んで目を閉じた。そんなルリにタクトは若干嫌な予感で目を細める。 そして、良いことを思い付いたと言わんばかりの笑顔で手を打って、すぐ近くの席で友達と話していたヒロシの腕を掴んでタクトの前に突き出した。 「は?な、なんだよ!」 「ヒロシ君とかどう?」 突然引っ張られたヒロシは動揺しているが、ルリは気にした様子もなくにこやかにタクトに訊いてくる。 「え、ヒロシ?」 「うん、どう思う?」 タクトは突然のことに驚きながらもヒロシの顔を真っ直ぐ見つめて少し考えるように瞬きした。 ヒロシは密かに彼女に惹かれていた男子の一人だったので、タクトのそんな真っ直ぐな視線に自然と顔が熱くなるのを感じた。 そんなヒロシを見て、彼の分かり易い恋心に気付いていたルリは実に楽しげな表情で傍観者を決め込んでいる。 「うん、好きだよ」 「な、え……まじで?」 タクトがヒロシを見上げるようにして微笑んで言うと、ヒロシは完全に動揺が限界地点まで到達したらしく動きが固くなっていた。 彼女の赤い綺麗な瞳に真っ直ぐ見つめられるだけでドキドキしてしまうというのに、こんな風に微笑みかけられるなんてっ――ヒロシの頭の中には様々な言葉や思いが駆け巡っていた。 だが、そんな夢のような時間は無惨にもあっという間に終わりを告げた。 「――それは友達として、かな」 「うん、よくノート写させてくれるし」 ヒロシって優しいよね、と嬉しいけれど今は言われたくはなかった言葉がヒロシに重くのしかかった。所謂良い人止まりって奴、だ。乾いた笑いしか出ない。 ――だが、それ以上に 「あれ、スガタくんどうしたの」 シンドウ・スガタ――はっきり言って今一番ここにいないで欲しかった人物だった……というか、さっきまで影も気配もなかったのにとヒロシは心の中で思った。 「ごめんね、タクト連れて行くよ」 「え、今日部活あるんだっけ」 スガタの申し訳なさそうな言葉にルリは不思議そうにそう訊ねると、スガタはタクトの鞄を持ってタクトの腕を掴みこう言った―― 「今日はデートだから」 一瞬、教室内に静寂が訪れた。 シーンとした教室内はすぐに生徒達の声で溢れかえった。 「じゃあ、また明日」 そう言って教室の混乱から抜け出すようにタクトの腕を引っ張り、二人はまるで愛の逃避行でもしているかのように教室から飛び出した。 「ス、スガタ!!」 「……何?」 手を引かれて結構な距離を歩いていたが、タクトはそろそろいいだろうかと思い、スガタに声をかけた。 「デートって、お前な……」 タクトは乱れてしまったスカートの裾を直しながら上目遣いにスガタの表情を見つめてそう言うが、スガタはいつもと変わらない笑顔だった。 「嘘をついたのは謝るけど、」 「そうじゃなくて、明日みんなに何て言うつもりだよ」 顔を赤くして怒っているタクトを見てもスガタは表情一つ変える気配はない。 それが益々憎たらしくて静かに睨みつけた。 「あそこから連れ出したかったんだ」 「……スガタ?」 そう言ったスガタの表情は思った以上に険しかったのでタクトは不安になり名前を呼んだ。 「ス、ガ…――」 気付いた時には、タクトは強く抱きしめられていた。少し強い力に驚きながらもそっと背中に腕を回して抱きしめ返した。 「スガタ、もしかして嫉妬した?」 「……」 顔は見えないけれど、微妙な表情をしているんだろうなと想像してタクトは小さく肩を震わせて笑った。 少ししてやっと落ち着いたのか、体をゆっくり離して見つめ合った。 すると、スガタの表情が自分がさっき想像していたものと全く同じでタクトはまた笑ってしまった、それに釣られるようにスガタも微笑んだ。 「じゃあ、嘘から出た真ってことで」 「デートしようか」 そう言って、スガタはタクトに再び手を伸ばして自分より一回り小さな手と優しく重ねて、ゆっくりと歩き出した。 もっと嫉妬してなんて我が儘かな ――――――――― あとがき アゲハ様へ ⇒リクエストありがとうございました! 嫉妬するスガタが書けて楽しかったです。あと、何気にヒロシが結構目立ってしまってすみません。 では、ありがとうございました。 タイトルは空想アリア様より |