⇒「考えたこともないよ」
※若干暗いので注意です




「まだ、結婚なんて想像も出来ないよ」

まだ付き合ってる人もいないし、と笑って言うタクトの横顔を見つめてスガタは視線を窓の外に広がる夕焼け空に移した。

「――僕は考えたことある」

「そう、なんだ」


スガタの言葉に少し驚いたように一瞬目を見開いたが、すぐに何でもないとでも言うようににっこりと穏やかに笑ってそう言うタクトにスガタは胸がもやもやするのを感じた。


「……いつもそうだ」

「スガタ、」


吐き捨てるようなスガタの言葉にタクトは手を伸ばしてスガタの肩に触れようとするが、伸ばした手は結局届くことなく行き場をなくした。
そして、タクトはこんな風に感情を露わにしてぶつけてくるスガタを見たのは初めてかもしれないと思っていた。


「僕の気持ちも、悩みも全て知っている癖に……お前は」

「…――」


タクトには何も言えなかった。それは、スガタの気持ちに答えられないのは確かな事実で、ここでどんな慰めの言葉を言っても無駄だとわかっていたからだ。
そして、心のどこかでスガタが自分を責めるのも当然だという気もしたからだった。


「それでも、お前が――タクトのことが好きなんだ」


タクトが自分の気持ちに答えてくれることがないとしてもその想いだけは事実だった。
飾りも余裕もない告白の言葉を聞いたタクトはスガタらしくない、と思ったがもしかしたら自分が知らなかっただけでこれが彼の素なのかもしれないと思った。

「好きなんだ、」

「……ごめん、スガタ」


謝ることしか出来ない。タクトは既に諦めたような表情をしていた。
スガタは謝るタクトの伏せられた長い睫を見てただ唇を噛んだ。


「なんで」

「だって、スガタにはワコがいる」


タクトは伏せていた赤い瞳を開いて小さく微笑みながらそう言った。


「スガタにもワコにも、幸せになって欲しいよ」

「…――っ!」


そう言って微笑みながらもタクトはスカートの裾を小さな手のひらで握りしめていた。


「タクトは、お前はそれで幸せなのか」

スガタの問いにタクトは少し悲しそうな表情をして、スガタに背を向けるように赤く染まった空が見える窓へ向き直った。
窓から見えるのは必死で来たことにより手に入れた新しいステージだ、この島で何をしたかったのか考えてタクトは小さく微笑んだ。


「――タクト?」

スガタの心配そうな声にタクトはスカートを翻して振り返り、いつもと変わらぬ笑顔を見せた。
そんなタクトの笑顔にスガタは益々顔を曇らせる。


「この話はここまで!」


さっきまでのことなんてなかったかのようにタクトは明るくそう言って、スガタに笑いかける。
スガタは煮え切らない想いを抱えたまま頷いた。


「行こう、スガタ」


「……ああ」


気付かない内に僕は既に選択していたのかもしれない、タクトの小さな背中を見つめてそう思った。

どうしても手に入らないのなら、全て壊せばいい


自分自身の手を静かに見つめて強く握り締めた。



破壊まで


―――――――――
あとがき

色々すみません、ゆか様リクエストありがとうございます!
こちらはスガタがヤンデレ覚醒しかけって感じに……ごめんなさい。

では、ありがとうございました!




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