★5000hit企画 ▽瑠魔さまリクエスト ※女体化タクト注意です ※若干ギャグ 「えーと、ワ、ワタナベさーん?」 「ミセス・ワタナベと呼んで下さる?」 タクトの焦った声は気に留める様子もないカナコは呼び名について訂正を加えている。 タクトとしては早くこの事態から逃れたい一心なのだが、人生そう上手くいくものではない。 「あら、これなんて似合いそうね」 「は、はあ……」 そう言いながらカナコがタクトの体に合わせるのは妙にヒラヒラとした服だった。タイガーやジャガーが見たら喜びそうな服だなあとぼんやりタクトは考えていたのだが、それを着るのが自分となると話は別だ。 タクトは制服以外だとあまりスカートを穿かない――元はと言えばこの話から全てが始まったのだ。 ******* 「タクトは私服でスカートは着ないんだな」 全ての始まりはスガタの何てことのないこの一言だった。 スガタも特に深く考えて言った訳ではないだろうと思う。だが、居合わせた人物が厄介だったのだとしか言いようがない。 「そう言えばそうだね、……うーん、勿体ない」 「勿体ないって何が?」 普段もスカートなことが多いワコがタクトの制服のスカートから伸びた細く白い脚を見て目を細めながらそう言った。そんなワコの視線にタクトは苦笑いするしかなかった。 「……に、似合わないしさ」 「えー、そんなことないよ!」 タクトはあまりそういう話に慣れていないのかただ困ったように手を横に振っている。ワコは本当に勿体ないと思っているらしく熱くタクトに語っているが、その熱弁に更にタクトは冷や汗を流した。 そんなタクトの様子にスガタはそろそろ助け舟を出そうかと思っていた時だった。 「――それなら、似合う服を探せば良いのではなくて?」 そう唐突に会話に入ってきたのは後ろの席でシモーヌに髪をセットさせていたカナコだった。 「私が似合うお洋服を選んであげるから、ね?」 いつもと変わらぬお色気たっぷりな声や仕草に三人は気圧される。 そして、呆然としているタクト達を置いてカナコは楽しそうに微笑んで立ち上がった。 「え、ちょっと……」 立ち上がったカナコをぼんやり見つめていたタクトを両脇から捕まえてきたのは今までずっとカナコの側に控えていたシモーヌとタカシだった。 タクトは抵抗するが、思ったよりも強い二人の力に脱出は不可能だった。 それを見ていたスガタ達も慌てて追いかけようとするが、 「楽しみは大事にとっておく物よ」 というカナコの言葉にスガタとワコは目を見合わせた。 どうするべきかと悩み、スガタはとっさにタクトの空いている手を掴んだ。その行動にホッとした様子を見せるタクトを置いて、スガタは穏やかに微笑みながら言った。 「面白そうだから、僕も行くよ」 スガタのクラスの女子が黄色い声を上げそうな綺麗な笑顔を見ながらタクトは諦めるように肩を落とした。 ***** 「あら、これなんてどうかしら」 「は、はあ……」 もうどの位の時間が経っただろうか、タクトはぼんやりと考えるが考えると益々疲れそうだったので考えるのを止めた。 カナコは流石というべきか、すごい量の衣装持ちだった。こんな物いつ着るのだろうかと思うような物もある。 また、いつの間にかスカートからも離れたりするので、果たして何の為にここに来たのだったかと気が遠くなる。別にスカートを穿きたい訳ではないが、スカート云々以前に怪しい物もあるのでそれは出来る限り避けたいという気持ちで一杯だったのだ。 「やっぱり、彼は和服の方が好きなのかしら」 「か、彼って誰のことかな……?」 メイド服やセーラー服まで着せられそうになり、必死で抵抗していたタクトはカナコの唐突な一言に表情を引きつらせた。 「あら、シンドウ・スガタくんのことに決まってるじゃない」 「……今はスガタの好みとか関係ないと思うんですけど」 タクトの言葉が聞こえているのかいないのかカナコはぶつぶつと独り言を呟き悩んでいるようだ。 そして、急に厳しい顔付きになりタクトの肩を強く掴んだ。タクトは急なカナコの変化についていけず、ただ流されるばかりだった。 「やっぱり巫女服だと思うわ」 「な、何が……」 「彼のハートを掴む為の服よ」 カナコの唐突過ぎる言葉にタクトは完全に固まってしまう。ふざけているのかと思い、表情を窺うと本気であることが読めてしまい更に冷や汗を流す。 カナコの言う「彼」とはスガタであることは間違いないだろうが、考えれば考える程タクトの顔は引きつっていく。 「これ、別にスガタに見せる為じゃ――」 「ツンデレもありだと思うけれど、そればかりでは駄目なのよ!」 「い、いやその……」 勿論ツンデレとかそういったものではないのは確かなのだが、カナコには既に声は聞こえないらしいことに気付きタクトは肩を落とした。 仕方ないのでカナコに渡された所謂巫女服と呼ばれる物を着ることにした。 スカートがどうのって話は一体どこに行ったのかと遠い目をしながら考えて溜め息を吐いた。まあ、はっきり言ってコスプレだが、スカートよりは良いかと無理やり自分を納得させてタクトはゆっくりと着替える。 「こ、これでいいのかな……」 一人慣れない和服に戸惑いながら奮闘しているタクトに後ろから突然声がした。 「――こうですよ」 「ひえぇっ!」 シモーヌが静かに控えてたらしく手間取っているタクトを見かねて手伝ってくれた。悲鳴をあげてしまったことを申し訳なく思い、タクトはシモーヌに礼を言うがただ頭を下げてカナコを呼びに言ってしまった。 しかし、数分経っても誰もやってこないことに流石に疑問に思ったタクトは室内から出ようかと思い始めた時だった。 ****** 「ゼロ時間、か」 タクトを待っていたスガタだったが、最近は少し慣れてきてしまったゼロ時間になってしまったようだ。 ワコがいることを確認し、タクトはどこだろうかと視線を飛ばすとすぐに目に入った。 「――タクト?」 スガタの視線に気付いたワコも不思議そうに見た。そこにはいつもの緑色の制服でも赤い私服でもない。恐らくカナコに着せられた服なのだろういつものタクトとは全く違う服を着て立っていた。 そして、スガタはその服をよく見つめてから更に不思議そうに呟いた。 「何で巫女服……」 「コスプレ?」 スガタとワコの素朴な疑問の声はタクトには届かなかったが、タクトの方も羞恥心と闘っていた。 「え、巫女服?」 「コスプレ?」 という綺羅星十字団員たちの声にタクトはただ俯いた。 こういうのを間が悪いって言うのだと思う そんな落ち込んだ様子のタクトを見て何を思ったのか、急に周りが褒め始める。 「巫女服似合ってるよ!私も萌えたよ、だから自信持って!!」 ワコはよく分からないが自信を持てと励ましてくるが、タクト的にはこの格好に自信を持ちたくはなかった。だが、彼女は至って真剣らしく近くのスガタにも同意を求める。 「大丈夫だ、タクト」 「スガタ……」 優しい微笑みと安心するよう告げられる言葉にやっと少しホッとしたタクトは頬を染めながらスガタの方を見た。 「僕は和服好きだから」 萌えるとか言われなかっただけ良かったのかもしれないと少し現実逃避気味にタクトは考えていた。 「やっぱり私の見込みに間違いはなかったようね」 「奥様楽しんでいらっしゃいますね」 実に楽しそうに腕を組みながらタクトを見つめているカナコを見てシモーヌは淡々と呟いた。 「今度は何を着せようかしら」 カナコは一人タクトを見つめて次の計画を着実に立てていた。そんなカナコを見てタクトに心の中でご愁傷様と呟いた。 ――――――――― あとがき 瑠魔さまへ リクエストありがとうございました。 ギャグになりましたが、よろしかったでしょうか。 オチが見えなくて大変なことに…… すみません、ありがとうございました! |