★5000hit企画
▽ルナ様、紅牡丹様リクエスト
スガタク♀

※女体化注意



一日の授業が終わり、スガタは放課後の教室で同級生のルリと何か話し込んでいるタクトに目を向けた。
教室内はまだ生徒達の声で騒がしかった。そんな中でスガタの席からかなり離れたタクトの席――その席に座ったタクトにルリが何やら話しかけているようだ。
部活に誘おうかと思っていたスガタは仕方ないなと思いながら足を踏み出した。女子は話すことが好きなのはワコを見てきたのでよく知っているし、何より彼女にワコや自分以外にもちゃんと話し相手がいたのだなと失礼ながら安心すらしていた。

本人が聞けば怒りそうなことを考えながら、静かに二人の近くまで歩き出すと会話が自然と耳に入ってきた。

「――で、好きな人とかいないの?」
「い、いないよ」

ルリの興味深そうに訊いてくる声にタクトは困ったように否定するが、その様子が怪しいと思ったのか更にタクトを問い詰めるように迫っていく。

スガタはその会話を聞いて複雑な気持ちになり、声をかけるのを一瞬躊躇った、何故かはわからないが。
だが、そんなスガタにすぐ気付いたのは話し込んでいた筈のルリだった。

「あ、スガタくん!」
「――スガタ」

タクトもすぐに驚いたように顔を向けてきた。それにスガタは少しの戸惑いを感じながらも顔には出さず、とりあえず用件だけでもと思い直し口を開こうとした――

「私も気になるわ」

後ろの席に座っているカナコが至極楽しげに微笑みながらそう言った。

「――あなたの好きな人」
「急に何を……」

カナコはタクトを見つめてそう言い放った。それにルリは急に会話に割り込んできたのが気に入らないのか食ってかかろうとしたが、席から立ち上がったタクトに制される。

「――タクト」
「あ、部活か」

スガタの声にタクトは思い出したようにそう言ってから一瞬何か考え込むような表情をしてから、鞄を掴みカナコとルリに向かって別れの挨拶を告げてスタスタと歩いて行ってしまう。

「あら、ご機嫌損ねちゃったかしら」
「ワタナベさん、あなたねっ!」

ルリの怒りを露わにした声も気に止める様子もなくカナコはミセス・ワタナベと呼んでと訂正まで入れている。
スガタは彼女のその妙に余裕を持った態度に呆れながらもカナコの話を聞こうかそれともタクトをすぐ追った方がいいのか考えていた。

「悩んでいるのなら追いかけた方がいいと思うわ」
「…――」

カナコの言うことを聞いているようで多少癪ではあったが、スガタは二人から背を向けてタクトを追いかけることにした。

「まだまだぎこちないわね」
「何のこと?」
「――さあ?」

ルリの本当に不思議そうな問いかけにもカナコは惚けるように受け流した。
カナコは既に見えなくなった二人を思い出し静かに微笑んだ。

―――――
「――タクト!!」
「スガタ?」

スガタは廊下をスタスタと歩いていたタクトを少し慌てた声で呼び止めた。すぐにタクトは立ち止まり、振り向いた。
そんなタクトに溜め息を吐きながら彼女のすぐ隣まで追い付くとスガタは少しホッとしていた。

「どこ行く気だ」
「え、どこって部室に……」
「部室はこっちじゃない」

スガタの言葉にタクトは本気で驚いたようで目を見開いて周りをキョロキョロと見渡して、スガタの言葉が事実だと納得したのか気まずげに頬を掻いた。
彼女は決して方向音痴ではなかった筈だ。それに今までだって一人で部室に行くことは多々あったが、迷子になったりはしていない筈だ――ということは

「何をそんなに動揺しているんだ」
「動揺なんて、してないよ」

目を逸らしながらそう言うタクトを見てスガタは溜め息を吐いた。溜め息に驚いたのかスガタの表情を窺うように上目がちに見つめてくるタクトを見て可愛いなと思ってしまう自分自身にも少し呆れながら、タクトの細い手首を掴んだ。

「ス、スガタ?」
「部室、行くんだろ?」

手首を掴まれたことに動揺しているのか顔を真っ赤にしているタクトにそう言い聞かせるように言うと一瞬戸惑ったような顔をしたが、すぐに納得したのか小さく頷いた。

そのまま二人は静かにただ歩いた。歩幅をタクトに合わせながらゆっくりと歩いていると、隣を歩くタクトの赤くて少し癖のある髪が動きに合わせて動く様が動物のようで可愛らしく見えた。
スガタが何か笑っている気配に気付いたのかタクトはムッとした表情で見上げてくる。それすらも可愛い小動物のようで思わず目線より下にある赤い頭を宥めるように優しく撫でた。

「タクト?」
「…――」

頭に手を置いた瞬間タクトは何も言わず俯いた。スガタは嫌だったのだろうかと思い手を離そうと理性ではそう思っていたが、本能がここで引いたら駄目だと訴えかけていた。

とりあえず様子を窺おうと思い、顔を覗き込むと――

「――スガタのばか」
「タクト?」

覗き込んだタクトの顔は耳まで真っ赤だった。だが、タクトは手を振り払うことはなくただ俯いて小さく言葉を零した。
その様子がまるで泣いているみたいでスガタはよく分からないながらも申し訳ないような気持ちになった。女の子を泣かせてしまったことは無いが、きっとその時はこんな気持ちになるのだろうとうっすら思った。

「スガタは誰にだって優しいよね」
「……そんなことない」

タクトはスガタの否定の言葉に疑わしげに見上げてくる。
スガタは自分が誰にでも優しく接することが出来る程出来た人間ではないと思っていた。ある程度の関係で距離を保つから差し障りのないことしか言わないだけだ。だが、タクトには自分は誰にだって優しい博愛主義者にでも見えているのだろうかと思うと不思議な気持ちになった。

「誰のことも好きでも嫌いでもない……僕のことだって、」
「――それは、違うな」

スカートの裾を握り締めて辛そうに話すタクトを見て、スガタは心が痛むのを感じた。

「タクトを見ていると不思議な気持ちになるんだ」


――何故、彼女は辛そうにしているのか、そして何故僕は彼女の辛そうな表情を見ているとこんなにも苦しいのか、やっと分かった気がした。
自分の目の前で今にも泣きそうな表情で立ち尽くしているタクトを見て、スガタは抱きしめてあげたいと思った。真っ赤に染まった頬を触りたいと思った。


――そう思うのは

「少なくとも僕はタクトのことが」

――すきだよ



そう言って小さな体を強く抱きしめた。恥ずかしさから少し抵抗していたタクトもやがておずおずと背中に手を伸ばした。
人通りのなさに密かに感謝しながら、タクトの温かさを感じていた




―――――――――
あとがき

ルナ様、紅牡丹様リクエストありがとうございました!

女体化の良さがあまり出せず申し訳ないです。少しでも萌えて頂ければ嬉しいです。

では、ありがとうございました。




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