★5000hit企画
▽影楼さまリク
スガ→←タク♀←ワコ♂でギャグ甘


「あのさ、その……」
「ワコ?」

タクトは部活を終えて皆帰りの支度をし始めている中で一人何か考え込むように黙って俯いていたワコを見ていたが、急に顔を上げてこちらに近付いてきたことに少し驚きつつも話を聞いてみることにした。

「あのスガタくんのことどう思う?」
「――え?ス、スガタ?」

タクトは唐突な問いに思わず声がひっくり返ってしまう。何で急にという言葉が出そうになるが、頭が混乱してそんな言葉すら出ずに顔を赤くして黙ってしまう。
そんなタクトの様子にワコは一気にこの世の終わりとでも言わんばかりに顔を青ざめ絶望しきっていた。

「やっぱり、スガタくんのこと……」
「あ、いや違うよっ!スガタのこととか、そんな別に……!」

しょんぼりとしたワコを見た瞬間にタクトはしどろもどろながらも必死に弁解をするが、周りから見るとそれはどう見てもスガタのことを意識してますと言っているようなものだった。勿論周りにいる夜間飛行の面々は大変愉快そうにその様子を眺めていた。

だが、そんな中で唯一渋い顔をしていたのは話題の中心だと言えるであろうスガタ本人だった。
スガタは何故本人が目の前で見ているのにそんな話になっているのやら全く検討がつかず、呆然として二人の様子を見つめていた。

(そういうのはせめて本人がいない時に話して欲しいんだが――)

そんなことを心の中でうっすら思いながらも彼女が自分のことをどう思っているのかというのが実は気になっていたりもしたので、スガタはとりあえず傍観することを決めた。

「じゃあ、スガタくんのこと好きじゃない?」
「ス、スガタはほら冷たいし怒ると怖いし」
「……」

タクトは必死に思い出すように目を泳がせながら思い付く限りのスガタの不得意な点を上げていく。しかし、言っていることは子供っぽい悪口のようでそれが益々周囲の部員達にはおかしくて仕方ないのだが、本人は必死なようだ。

そして、それを近くで聞いていたスガタも微妙な表情で立ち尽くしている。それとは正反対にワコは一気にホッとしたような表情でタクトの言い訳のような言い分を聞いている。

「――つまり、スガタのこと好きとか絶対ないから」

そこまで必死で言い切ったタクトにワコは急に不思議そうに首を傾げた。そんなワコに気付かずにタクトは顔を真っ赤にしながら言い続ける。

「それに他人に興味とか本当はないくせにスカートが短いとかぼんやりし過ぎだとかすぐに文句付けてくるし、それに――」

そこまでタクトがやや俯きながら言った時それまでただ黙り込んでいたスガタが口を開いた。

「僕は最初から気になってた、興味ないとか勝手に決めつけるなよ」
「―……なっ!?」

いつもの丁寧な口調とは少し違うスガタに戸惑いながらもタクトはスガタの方に向き直る。しかし、タクトは戸惑いよりそれ以上にスガタの言葉に動揺しながらも嬉しさと恥ずかしさが込み上げてくるのを感じていた。

「そんなの……」
「初めて会った時から気になってたから今一緒に居る、興味がなかったら部活誘ったりしない」

スガタはタクトの言葉を無視するように淡々とした口調で言い募る。スガタの真っ直ぐな視線に耐えきれず思わずタクトは目を逸らした。


「つまり、僕はタクトのことが――」
「そこまでだ」
「――部長!?」

良いところだったのにとでも言わんばかりのジャガーの言葉は無視してサリナは二人に向き直る。

「……部長」
「スガタくん、怒りたい気持ちも分かるよ。だが、周りをよく見るべきだ」

珍しくサリナに対して敵意というか怒りの視線をぶつけるスガタに戸惑うことも恐れることもなく飄々とした態度でスガタに言ってのけた。
スガタは周りの目を気にしろということだろうかと思い、周りを見渡すがはっきり言ってしまうとスガタがタクトに好意を抱いていることは今更過ぎる事実なので、気にする必要なんてどこにあるのかとスガタは思っていた。
そう思える辺りスガタは人の目を普段からあまり気にしていないのがよく分かると言えるが、それとは反対に注目されていることに気付いたタクトは妙に恥ずかしくなってしまい、真っ赤になって俯いた。

そんな正反対な二人の様子を一通り見た後、サリナは呆れたように額に手を当てて深く溜め息を吐いた。

「私が言いたいのは、」

そう言いながら、サリナが示した先にはワコがいた。

「ワ、ワコ?」

タクトはワコの表情を見て一気に慌てたように目を見開いた。
ワコは二人の一連のやりとりを見て完全に停止してしまっていたらしい――まさに一人ゼロ時間を堪能してたとはサリナの言葉である。

「あ、あのワコ」
「……いいんだ」

ワコはタクトに声をかけられ我に帰ったのか目に光は戻ったが、どこか虚ろな表情で諦めの境地に至っている。
そんなワコを見て長年の幼なじみであるスガタもやはり心配なのか冷や汗を流しながら見つめていた。

「いつかこうなることは、分かってたんだ。二人はすごくお似合いだし……」
「……ワコ」

今にも泣きそうな表情で告げられる一言一言は二人の胸に突き刺さった。

「……おめでとう」
「ワ、ワコ!」

そんなワコの小動物的な表情に母性本能を擽られたのか、タクトは一緒に涙ぐみながら力強く抱き締めた。
それを見ていたスガタも何か納得したような表情で頷きながら近くで微笑ましく見つめている。


「相変わらずですね、あの三人は」
「本当にいい加減にして欲しいよ」

ジャガーとサリナは遠い目をしながらまるで親子のような三人を見つめてそう呟いた。

「あの二人何だかんだでワコに弱いからね」
「だからって毎回あのオチはどうかと思いますよ」
「それには同意するが」

つまり、結局いつもこの三人はこうなのだ。タクトとスガタが両思いなのは確実なのに付き合わない。
サリナはそれはワコが原因というよりもあの二人に原因があると密かに思っていたりする。二人は結局ワコに弱いのだ。ワコに対して二人して保護欲的な物を刺激されてしまうらしく、悲しげな表情なんてされればすぐに二人でフォローする。そして、ワコはタクトのことが好きなので二人が付き合うことになると悲しむ、それを何とかする為に結局カップル成立ならずという悪循環が見事に出来上がっているのである。
ワコは二人が本当に付き合うのなら諦める覚悟も出来ているのだろうが、当の二人がこれなのでどうしようもない。

「本当早くワコ離れして欲しいところだ」
「……でも、部長割と楽しんで煽ってませんか」
「何のことかな」

ジャガーの疑わしげな問いかけにも笑って受け流す辺り流石としか言いようがないが、誰もそれを褒める気はない。

何だかんだこのなかなか進まない恋愛ゲームを一番楽しんでいるのはこの部長であるサリナであることは間違いあるまいと密かにジャガーは思っている。同時にややこしくしているのも彼女だと言える。

「まぁ、恋愛に障害はつきものだ」
「………」

最早ジャガーはただ彼女の楽しげな顔を見ることしかできなかった。心の中でスガタに謝りながらも少し坊ちゃまもいい加減頑張って下さいと密かに思いながら三人の既に楽しそうに笑っている様子に安心しつつも溜め息を吐いた。



「つまり青春を謳歌しようということだ」
「……部長は少し黙ってて下さいね」


―――――――――
あとがき

影楼さまリクエストありがとうございました!
ギャグになったかは定かではないです、すみません。
ある意味三人の関係性がギャグです。

では、ありがとうございました。




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