▽ヘド→サカ前提ヘドタク
▽タクト囚われパロ


「…――」

後悔していた、またこんなにも簡単に自分は手放してしまった。美しい薔薇だったのに、あんなにも愛おしく想い大切にしていた筈だったのに――そんな後悔の念はまるで泥沼のようにヘッドの思考を奪っていく。

「――なんで」

静かな空間に小さな声が響いた。カタシロではない、ヘッドも知っている人物の声だが、今は何も考えたくはなかった。だが、声は尚もヘッドに声をかける。

「何だい、銀河美少年?」
「――タクト」
「タクト君はどうしてそんな顔をしてるんだ?」

捕らえた銀河美少年をこの鳥籠に入れたのはヘッドだ。何故そんなことをしたのかはヘッド自身にもよく分からなかった。彼女はもういない、では彼は彼女の代わりになってくれるのだろうかとぼんやりと考えている自分自身に吐き気がした。

「気多の巫女、好きだったなら……どうして」

そう問いかけてくる瞳はとても純粋で見ていることが辛いとすら感じた。
彼はきっと恋愛とは美しく温かなものだと思っているのだろう、実際はずっと醜く愚かなものに過ぎないのだ。
――そう教えてあげたら彼はどんな顔をするだろうか、悲しむだろうかそれとも…――

「軽蔑するかな」
「……?」

唐突な言葉に不思議そうに首を傾げながらも彼は静かに首を横に振った。

「何故?」
「だって悲しそうだから」

そう言われて初めてああ自分は今悲しかったのかと自覚して驚いた――誰かを失って悲しいと思えた自分自身に、まだ誰かを失いたくないという気持ちがあったのだということに。

「君はどこにも行ったりしないかな?」
「わからない」

ただ淡々と告げられる言葉は決して慰めの言葉ではなかった。しかし、そう言ったタクトの表情はどこか悩んでいるようにも見えた。

「――ここにずっとはいられない、多分」
「そうか……」

何かを決意したような表情で囚われの身である筈なのにタクトはそう言い放った。しかし、そんな彼の言葉は妙に真実味があってああ、きっと彼もここから飛び立っていくのだろうということが容易に想像出来てしまった。
全てを諦めることはとても容易い、あまりにも簡単で気付いた時にはもう全てを諦め、手放してしまっているのだろうとヘッドはぼんやりと考えていた。

「――だから、」

そんなヘッドを見てタクトは訴えかけるように話し掛けた。

「―――」

彼の言葉から耳を塞ぐように立ち上がり声をあげた。それ以上聞くことを拒むように。

「簡単には出してあげないよ、銀河美少年」
「…――」

そう言ってタクトに背を向ける。タクトはヘッドの背中を見つめながら小さく呟いた。

「――バカだよ、本当に」

小さな声は静かな部屋に虚しく響いた。


一緒に行こう、銀河の世界へ



―――――――――
あとがき

よくわからないはなし




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