★5000hit企画
▽華音さまリクエスト


「タクトくんの好みはどんな子なのかしら?」
「――へ?」

次の授業は確か移動教室だったかと思いながら次の授業の準備をしていたタクトに声をかけたのは後ろの席のワタナベ・カナコだった。
突然話しかけられたことにも驚いたが、それ以上に質問内容に動揺しているタクトを見てカナコは実に楽しそうに微笑んでいる。

「どんな子が好きなのかしら、それとももう好きな子いるの?」
「い、いや……そういうのは」

しどろもどろで誤魔化そうと必死な様子のタクトは既に真っ赤になっている。そんな様子が更にカナコの悪戯心を擽るのだが、本人は全く気付いていないようだ。

「え、えーっと」
「――タクト」

困っているタクトを助けるようにタイミング良く現れたのは――教科書を持って近付いてきたスガタだった。

「スガタ!」
「次、移動教室だろ。早く準備した方がいい」

スガタが来たことに気付いた途端タクトは慌てて椅子から立ち上がり、嬉しそうな声をあげた。その様子はまるで犬のようでその一連の行動を見ていたカナコはつい笑ってしまった。

「移動教室か、えっとどこだっけ」
「……視聴覚室」

勢いよく立ち上がったものの思い出せなかったらしくスガタに訊くと呆れたような声ではあるが、教えてもらい準備をする。

「僕がいなかったらどうするつもりだったんだよ」
「え、うーん……」

スガタの問いに本当にわからないらしく腕を組んで悩み始めたタクトにこれ以上は無駄だろうと判断し、もういいよと言って頭に軽く手を置いた。
普段はそれ程頼りないと思うことはないのだが、タクトはふとした時にこんな風に甘えてくるかのように頼ってくることがあった。
恐らく本人に自覚はないのだろうと思うと更に厄介だなとスガタは密かに思っていた。

「……準備できたか?」
「うん、ありがとなスガタ」

スガタは少し呆れてはいたもののタクトのあまりに純粋な感謝の言葉と笑顔を見るとこれはこれでいいかと思えてしまい、そんな自分に心の中で溜め息を吐いた。

そして、二人は静かに肩を並べて教室を出て行った。


――そんな二人の背中を見て何か考えるような表情をしていたカナコは数秒後には何かに気付いて妖艶に微笑んだ。

「どうかなさいましたか」
「あら、タカシ」

近付くといつもより妙に楽しそうなカナコに気付き、タカシは念の為訊ねた。

「タクトくんの好みのタイプ、分かったかも」
「……そうですか」

あまり深く関わらないようにという配慮からかタカシはあまり詮索はせず、ただカナコの話を聞いた。

「……ラブラブね、本当に」

もうとっくに二人の背中は見えないが、静かに呟いた。






―――――――――
あとがき

華音さまリクエストありがとうございました。
あまり甘えてない気もします、すみません(´・ω・`)

ありがとうございました!




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