★5000hit企画
▽音色さまリク
スガ←タク



「タクト」

スガタの声に反応して顔を上げると心配そうな二人が見つめていた。

「タクトくん顔色悪いよ?」
「真っ青だぞ」

二人にそう言われてそう言えば確か授業中ではなかっただろうかとタクトは少し的外れなことを考えてぼんやりしていた。

「あ、れ……?授業は」
「もうとっくに終わったぞ、今は放課後だ」

タクトの間の抜けた言葉にスガタは若干呆れたように笑いながらそう答えた。
そう言われていつの間にか寝ていたらしい自分に驚き、時計を見て納得した。

「授業中寝てたでしょ!」
「えっ!」
「顔に跡ついてるぞ」

ワコの言葉に驚いているタクトにスガタはタクトの右側の頬を指して笑いながら教えた。とっさに頬を手に当てるが、その慌てた様子が更におかしかったらしくワコは腹を抱えて笑っていた。

「――でも、本当に顔色悪いよ」
「そうかな……」

一通り笑った後、ワコは真剣にタクトの顔を見てそう言った。それに賛同するようにスガタも頷いた。

「今日は部活休んで帰った方がいいかもな」
「うん、部長には伝えておくよ」

二人は本格的に体調を崩す前にと思っているのかタクトにそう言った。そんな二人にタクトは少しだけ寂しさを感じていた。
そんな風に感じる自分に気付いてタクトは何故だろうかと自問自答する。二人は本気で心配してくれているからこそ言ってくれているというのに、何故僕は…――そこまで考えてタクトは自分の意識が遠くなるのをぼんやりと感じていた。

そして、慌てた二人の声が聞こえたような気がした――


―――――
「…――ん、あれ?」
「……起きたか、タクト」
「ス、ガタ……?」

気付いた時にはタクトはベッドに寝ていた。そして、すぐ隣にはスガタが心配そうな顔でこちらを見つめていた。タクトは何故スガタがいるのだろうという気持ちもあったが、それよりも少し嬉しかった。彼が自分の隣にいてくれることが。

「良かった。急に気を失ったからどうなるかと思った」
「……教室で倒れたのか」

他人事のように呟いたタクトにスガタは安心したような呆れたような顔で溜め息を吐いた。タクトは保健室を見回して保健医がいないなと思ってから寧ろ保健室に自分とスガタ以外いないことに気付いた。

「あれ、ワコは?」
「部活に来ないと部長達が心配するだろうから、とりあえず先に部長に報告だけでもしてきてくれって頼んだんだ」

教室でタクトが倒れて驚いただろうにとっさにそこまで考えられるスガタの冷静さに改めてタクトは驚いた。そこまで考えてふと、では自分を運んだのは誰なのだろうかと思った。教室には既に人はあまりいなかった気がするし、一体誰が――と考えてもしかしてという気持ちでタクトはスガタに問いかけた。

「スガタが、運んでくれたのか……?」
「ん?そうだけど」

何でもないことのように平然と告げられた言葉にタクトはベッドから慌てて起き上がった。

「お、重かっただろ、ご、ごめん!」

身長が殆ど同じ自分を運んだとするとかなりの重労働だっただろうと考えるとタクトは申し訳なくて慌てて謝った。そんなタクトを見て何を思ったのかスガタはおかしそうに笑っていた。

「いや、軽かったよ?」
「…――えっ、いや、でも」

スガタの予想外な言葉にタクトは動揺して顔を赤くして慌てふためいた。タクト自身もなんでこんなに恥ずかしいのかと思いながら手で顔を扇いで紛らわそうと必死になる。
タクトの明らかに照れた様子にスガタは更におかしそうに笑ってこう言った。

「ワコの言った通りでびっくりした」

そんなスガタの一言でタクトは自分の血が一気に冷めるような感覚を感じていた。

「ワコがそう言ったらきっとタクトが照れるって言ってたけど」

本当に真っ赤だと言って笑うスガタを見てタクトは何を自惚れていたのだろうかと思っていた。何時だってそうだ、スガタがタクトと話して本当に楽しそうに笑う時はワコの話の時だったじゃないか――何でそんな簡単なことにもっと早く気付けなかったのだろうという後悔をすることすらタクトには出来なかった。

「――スガタ、ありがとう」
「タクト?」

黙り込んでいたタクトが急に発した言葉にスガタは不思議そうに首を傾げた。

「僕は、もう大丈夫だから……部活行った方がいいよ」
「体調悪そうだし、帰るなら一緒に行くよ」

楽しそうに話していたもののさっき倒れたばかりのタクトが寮は近いとは言え、一人で帰るのに不安を感じたスガタがそう声をかけるが、タクトは静かにベッドから立ち上がった。

「本当に大丈夫だから……今日は、ありがとう」
「……分かった。気を付けろよ、また明日」

スガタはタクトの目を見てこれ以上言っても無駄だと判断したのか少し小さく溜め息を吐いてからそう言って保健室から出て行った。

タクトはそんなスガタの背中を静かに見送りながらぼんやりと考えていた。

「何で好きになっちゃったんだろう」

理屈でどうにかなるものではないからこそただ辛くて胸が妙に苦しかった。どうしようもない感情に泣きたいような叫びたいような気持ちになってそして、タクトはただ後悔した。

「こんなに苦しいなら恋なんてしなければよかった」

そう言いながらもタクトはスガタの楽しそうに笑って話している様子を思い出すと胸が温かくなって嬉しくて仕方なくなる。もうどんなに後悔したって遅いのはタクトにも分かっていた、だってこんなにも




貴方の笑顔に恋をしていた




―――――――――
あとがき

音色さまリクエストありがとうございました!
これ保健室にミドリ先生いたら大変だなと今更ながら^ ^




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