★5000hit企画
◎さばささまリク
◎演劇部男体化でタクト総受け
※分かりにくいので名前は変わりません



「ようこそ、夜間飛行へ」
タクトは部室に入り、まるでホストクラブ状態のオーラに思わず顔が引きつるのを感じた。

「え、えーと……スガタここって」
「演劇部だよ、彼は部長のエンドウ・サリナ先輩」

スガタに助けを求めるように視線を移すと、彼はそんなタクトの様子が面白かったのか笑いながらも目の前の人物について紹介してくれた。
「あ、ツナシ・タクトです」

慌てて頭を下げながら挨拶をすると、サリナは面白そうにくすくすと笑った。その笑顔がさっきのスガタに少し似ていた。

「あとは知ってると思うけど、ヤマスガタ・ジャガー先輩とスガタメ・タイガー」
そう言って紹介された先にはスガタの家にいた二人だった。二人はスガタの言葉に色々抗議の言葉を唱えているが、その騒ぎも耳に入らない程二人の格好を見てタクトは一人呆然としていた。

「……お、お二人は男性だったんですねー」
「あ、気付いてなかった?」

自分が二人にあった時の服装を思い出して、タクトは誰の趣味なのかと思い冷や汗を流した。最初は獣耳も趣味を心配したが、実際は獣耳女装メイドだったという事実にタクトは完全に一瞬意識が遠退いていた。

「まあ、深いことは気にしない方が精神衛生上も幸せだと思うよ」
「あ、あはは」

スガタのフォローだか何だか分からない一言にタクトは苦笑いをしながらも、部室を見渡すと圧倒的なオーラに目眩すら感じていた。

「ツナシ・タクトくんか、舞台映えしそうだね!美少年オーラ出てるし」
「美少年オーラって……」

サリナの上機嫌な言葉をタクトは冗談だと思い笑い飛ばすが、周りの部員達は大きく頷いていた。それに気付いて静かに苦笑いした。

―――
「でも、演劇部なのに男子しかいないんですね」

ふと浮かんだ疑問を部長に呟くと、何でもないことのようにさらりとこう答えた。
「ファンが多いからね。女子で入りたいって子もいるだろうけど、本当に入る勇気のある人なんていないんだよ」
「特にワコ様とスガタ坊ちゃまが人気なんですよ」

サリナの言葉に付け加えるように告げられたジャガーの一言に更に驚いてしまう。確かにスガタとワコどちらもタイプこそ違うが美少年だと思う――しかし、其処まで高嶺の花的な存在だったとはと思い、少しの間呆然としてしまう。ファンクラブや親衛隊でもできてたりしてと考えて思わず笑ってしまった。
「まあ、劇で女子が必要な時は女装してもらうから大丈夫なんだ」
「は?」

当然だと言わんばかりに胸を張っているサリナは優しそうな顔をしているが、なかなかの迫力の持ち主で思わずタクトは圧倒されるのを感じた。

「とりあえず、今度の劇はタクトくんが女装で決定だから」

よろしくと言いながら微笑むサリナの笑顔は多分女子が見たら黄色い声を上げそうな程に華やかだが、今のタクトにとっては悪魔に見えた――決して本人には言えないが。

「いや、どうせならジャガー先輩とかの方が……」
「こういうのは意外性も大事なんだって」

急に火がついたように熱く語り出したワコ曰わく、ジャガーやタイガーは劇で女装はしないらしい。普段メイド服を違和感なく着こなせている二人が女装した方が自然じゃないかというタクトの意見はあっという間に潰されてしまう。
必死に自分に女装を勧めるワコの様子を見てタクトはもしかして必死なのは自分がやりたくないからではないかとうっすら思いはしたが、男なら当然だと言えるだろう。

(僕も嫌だけどね……)

そう思いながらも、ワコのここまで必死な様子を見てしまうと無理矢理押し付けたりするのは忍びないとすら思ってしまう。それもこれもワコの小動物的な可愛らしさによるものだろうなと考えて諦めた。

「まあ、女装って言っても大したものじゃないよ」

何だったら代わるよとまで言ってくれるスガタに本気で感動してしまい、ここまで来たら頑張ろうという思いで拳を握り締めた。

「で、そうすると問題は相手役なんだけど」
「相手役……」

やっぱり恋愛ものなのかと遠い目になりつつもサリナの言葉に耳を傾ける。タクトはもう覚悟は決めたんだし、相手役が誰であろうと気にしない位の心持ちだった。

「じゃあ、誰かやりたい人!」

サリナのまるで委員長を決めるような方法にタクトは立候補する人はいないだろうとうっすら思いながら頭をかいた。

しかし、現状はタクトが思い描いていたものと見事に異なっていた。
結局タイガー以外の全員が立候補したらしく半ば呆然としているタクトを置いて話はどんどん進んでいく。

「じゃ、ジャンケンで決める?」
「別に僕はそれでもいいけど」
「いくらワコ様と坊ちゃまが相手でも負けませんよ」

戸惑いながら提案するワコとそれに賛成するスガタそして妙に眼鏡を光らせたジャガーという傍目にも華やかな少年達――しかし、争っていることがことだからなと思い溜め息を吐きそうになる。

「ジャンケン、」

ポンという言葉と同時に三人はそれぞれ手を出した。そして見ると皆グーだった。ワコは分かり易く少しがっかりしたが、他の二人の表情はどうも読めなかった。
その後もなかなか決まらずにいると、何故か妙に緊迫感に包まれた室内の雰囲気を変えるようにサリナが笑って話し出した。

「どうしても決まらないようだったら、間をとって……」

サリナが、私がやろうかと言った瞬間に冷たい視線が飛び交い、それを避けるように冗談だよといって笑った。そんな部室の雰囲気にそこまで必死にならなくてもと思ったが、妙に恐ろしかったので言葉にはしなかった。
―――
「結局、スガタくんか……」
「そう拗ねるなよ、ワコ」

結局激戦(?)を終え、勝ち残ったのはスガタだった。それに本気で落ち込んでいるワコにスガタは頭を撫でて慰めるようにした。その様子がまるで兄弟のように見えて少しタクトは羨ましいと思った。
「でも、スガタが立候補するとは思わなかった」

タクトはそんな二人の様子を見つめながら、ふと実は最初から感じていたことを思い出してスガタに訊ねた。

「だって、タクトは僕の言葉で踏ん切りをつけただろ」
「まあ、そうだけど……」

確かに最後のスガタの一押しで覚悟を決めるかと思ったのは事実だ。だが、それが今の質問にどう繋がるのかと首を傾げているタクトの様子にスガタは柔らかく微笑んだ。

「君に覚悟させたのが僕なら、僕がエスコートするべきだと思ったから……じゃ、理由にならないかな?」

納得した?と問いかけるように覗き込んでくるスガタにタクトは一気に顔が赤くなるのを感じて顔を逸らした。
何で無駄に格好良くそれこそまるで、そういうドラマの台詞みたいなことをさらりと言えるのだろうかと思い、目眩すら感じた。

「スガタって本当に役者に向いてるかも……」

タクトは耳まで赤くなっていそうな顔を必死に冷まそうと手でパタパタと顔を扇ぎながらそう言った。

そんなタクトを見つめながら密かに囁いたスガタの一言はタクトには届かなかった。



―――――――――
あとがき

若干総受け?という感じですね。男体化は初めてですが、書いていてとても楽しかったです。
リクエストありがとうございました!



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -