▼スガ→タク→ナツ



「スガタのこと、好きだよ?」

「……友達として、だろ」


夕焼けの鮮やかな赤に染まった教室でスガタはタクトに詰め寄っていた。


「お前はいつも、誰にだってそうやって──」

「誰にだっていい顔してるって?」


まるで、何を言いたいかなんて分かっているとでも言わんばかりにタクトは笑ってそう吐き捨てた。

「分かっているのに、何で見ないんだ」

人の恋心を、僕の恋心を知っているくせにタクトはいつもそうだ。
目を逸らして見ないふりをして笑って誤魔化すのだ。

スガタはただ自分のことを、この気持ちをちゃんと見て向き合って欲しかった。この気持ちを受け入れて欲しいとは言わない、しかしなかったことにはして欲しくはなかった。


「ごめん」

「……タクト」


ただ目を逸らして謝るタクトにスガタは唇を噛みしめ静かに立ち去った。


「──ごめん、スガタ」


自分一人しかいない静かな教室でタクトは懐かしい笑顔とすぐ近くで見たスガタの辛そうな表情を思い浮かべていた。

「スガタの気持ちを直接聞いたらきっと僕は──」


スガタのことしか考えられなくなってしまう。きっとどうしようもなく彼を好きになってしまう。スガタのことを考えれば考える程、自分の中の懐かしい笑顔が消えてしまいそうになる、それがとても怖かった。

あんなに好きで好きで仕方なかった彼の笑顔や言葉がこんなにも簡単に

タクトにはどうすれば思い出を思い出として残しておけるのか、分からなかった。

「ごめん、ごめん──」


懺悔の言葉は届かない



2011/03/21 23:46









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