▼タケ→タク ▽捏造注意 「残念だったな」 「……何のことですか?」 先輩であるツキヒコの唐突な言葉にタケオは本当に意味が分からず訝しげな表情で問いかけた。 「気付いてないならいいけどな」 「……はぁ」 飄々とした態度でそう言ってツキヒコはすぐにその場から立ち去ってしまい、タケオの頭は益々疑問に包まれていた。 野球の試合であのツナシ・タクトに勝ったことで晴れ晴れとしていた気持ちは沈んでいた。 少し離れた所でミズノに耳打ちされているタクトの姿が見えてタケオは小さく舌打ちした。 「……何、イライラしてるの?」 「イライラなんてしてませんよ」 自分と同じように二人を見ていたらしいマリノにやや険しい表情でそう問いかけられ、タケオは肩を竦めた。 「じゃあ、人の妹をそんな凶悪な目で睨まないでもらえるかしら?」 「……睨んでなんていませんよ?寧ろ微笑ましく見てるつもりだったんですが──」 「それ、本気で言ってるんだとしたら」 「──相当の馬鹿ね」 妹とそっくりな青い瞳は冷めきってただ本当に呆れたようにこちらを見ていた。 「てっきり妹さんに嫉妬でもしてるのかと思ってたんですけど、そうでもないんですね」 「……」 言葉を失っているマリノにやっと自分のペースに持っていけたかと思い、タケオは不敵な笑みを浮かべた。 そんなタケオを静かに見ていたマリノはスッと立ち上がった。 「ミズノに嫉妬してるのは私じゃなくて」 「あなたじゃないの──」 そんな言葉だけ残してマリノはすたすたと立ち去った。 タケオはただ彼女の背中を見つめることしか出来なかった。 一体、彼女は何を言っているのだろうか……嫉妬、ありえない タケオはただそう自分に言い聞かせることしか出来なかった。 嫉妬の矛先 2011/03/21 14:48 |