忍足と一氏・拍手



 実在しいひん女の子を好きになってもうて、困っとる男ってナンボおるやろか。ちゅーても二次元やのうて、三次元の女の子な。例えで言うたら、ドラマとか舞台とかで役やっとる女優さんとか。そこにホンマにおんのやけど、作りモンの女の子。そない感じや。

 ホンマはちびっとちゃうねんけど。


 ユウジのライブは毎回満員御礼。ファンもめっちゃおって、まいどおおきにちゅー話や。ユウジがソロライブするときは、オレがマネのマネ事しとる。ユウジと小春が揃って漫才やらコントするときはお互いで着付けやったりするらしい。ユウジはホンマは小春がよかったらしいねんけど、小春は生徒会で忙しい身やから、アカンかったみたいや。そやから、まぁオレが引き受けてやっとる。ちゅーても、スケジュール管理やら何やらはユウジが自分でやっとるから、オレの仕事は衣装を着替えさせたったり、舞台袖に帰ってきたユウジにタオルとドリンク渡したったりとか、簡単な雑用なんやけど。
 舞台の上で照明が当たっとるユウジはキラッキラしとる。好きが高じてのネタやから、ホンマ生き生きしとる。最後、ユウジがオトして礼すると、客席から大喝采。冷めやらん熱の中、ユウジがめっちゃエエ笑顔で舞台袖に駆け込んでくる。
「ユウジ、お疲れさん」
 まっすぐオレに向かってきたユウジにタオルとドリンクを渡したる。
「おおきに!」
 ユウジとの身長差は9センチ。白石やったらキッチリ10センチなんやけど。あと1センチやから悔しい。


 如月ハニーちゃん言うのは、ロングの金髪にカチューシャつけて、刺激の強いめっちゃミニのワンピを着とる。特徴的なピンクの髪の毛、胸元のバックリ開いたセクシーな衣装、愛を武器に悪と戦うキューティーハニー、その正体や。ユウジはキューティーハニーがめっちゃ好きで、DVDセットを家に取り揃えとる。映画んなったときも、あのクオリティが実写で出せるかいなとか、ブチブチ文句言いながらも楽しんどった。男のくせにたっかい声出して、ハニーフラッシュ言うて笑て。
 ユウジは今まさにその如月ハニーちゃんのカッコをしとる。ミニの下には短パンはいとるけど。顔もうっすら化粧して、ユウジの原型残したまんまやけど、女の子になっとる。ハニーちゃんのモノマネはあんま似てへん。声変わりしてもうたユウジとは、元々の声質がちゃうからや。やけど、雰囲気で持ってく。ニッコリ笑顔がかわええって人気や。

 ユウジの扮する、如月ハニーちゃん。俺が片思いしとるまぼろしの女の子。

「ユウジ、成功のお祝いにオクラサラダおごったるから、帰ろうや」
「ホンマ!太っ腹やなァ謙也!!ほんなら、ちょおっと待っとって。今着替えんで」
「着替えんでええやん。めっちゃ似合とるし、そんまま行くで」
「は、ぁ?ちょ、謙也!」
 ユウジの腕引っ張ってく。ユウジは焦って何やら言うとるけど、それでもついてくる。

 かわええ女の子。ユウジが顔拭いたら、ウィッグ取ったら、衣装脱いだら、消えてまう。

 寂しいやんか。デートさしてや。
 告白する日は来えへんのやから。



おわり



20091002 町田




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