財前と一氏・新婚パラレル
お見合いしましょう

 齢十五にしてお見合いをすることになった。相手は一つ年下で、かっこいい男の子だそうだ。
 俺も男の子なんやけど…。
 でもまあ、実は好きな人は男の子だから大きな問題ではない。問題なのはそれ。俺には好きな人がいるということ。
 お見合いなんてすっごく嫌だった。好きな人がいるのに…、そしてまだ十五歳なのに…。初恋すら終えてないのに、お見合いなんて。相手だって嫌だろうに。イヤイヤ言っていたのにオカンという生物は最強だ。ずるずると、趣のある、いかにもお見合いという感じの料亭に引きずられて来た。

 まさか、男同士で結婚はできないから、俺が養子に入る形らしい。そうか、俺は嫁か。スーツもオトンのデザインした中で一番可愛らしい、クリーム色っぽいモノだ。
 何やねん、クリーム色って!俺は差し入れの鯛焼きか!
 あまりにもあまり過ぎて、ツッコミさえ滑る。鬱々とした気分で、オカンに正座させらされた座布団に収まっている。このまま来なかったらいいのに。

 頭を下げていたから、はじめは音で気がついた。シュッと襖を引く音。ああ…来てしもた。
 オカンが相手さんのご両親に挨拶しとる。気配が、卓を挟んだ向かいに座った。いよいよ、ご対面しなければ…唾を呑んで、決心を固める。

「え…?」
「こんにちは、先輩。エエ日和で何よりッスわ」
 目の前にいたのは後輩の財前だった。いつも無表情のくせに、今は信じられないほどの笑顔だ。その胡散臭さが、これが都合のいい夢なんじゃないかと思わせる。目を強く擦ってみた。
「夢と違いますよ」
 目を擦っても消えない笑顔の財前に言われた。

「ささ、後は若い二人に任せまひょ」
 オトンが調子良く言って、大人は部屋を出て行った。

「な、なぁ、なな、なんで…や?」
 動揺と緊張で動悸が早い。財前は気がつけばいつもの無表情に戻っている。
「なんでって、お見合いですやんか。ご両親、どないですかね。俺の笑顔、かなり好青年やったと思いません?」
「あ、ああ、エエ感じに胡散臭くてよかったけど、え、え、ホンマ何?混乱しとる、混乱しとるでぇ〜俺は」
「胡散臭いってホンマに失礼ッスわ」
 財前が徐に立ち上がって、俺の前に立つと、手を差し出してきた。
 ちょっと待って、立つの?俺、足痺れとるんやけど。
 財前は痺れていないのだろうか、俺の体を支えてくれ、どうにか立った。財前の誘導で、縁側に座り直す。妙に近い。やたら財前の側が熱い。
「結婚すんのやから、お互いのことよう知っといた方がエエでしょ。なんか聞きたいことあります?」
 珍しいと思うほど、聞き覚えのない財前の優しい声。夢のようで、頭が真っ白になる。

「ざいぜっお前、はっ、初恋はいつや?お、俺おれは、おまっ、その」
しどろもどろの俺に引き替え、そのときの財前と言えば爽やかそのもの。
「そんなん。今、先輩に」
 にこりとな、見たことないわ、こない笑顔。

 結果として、この縁談は極稀に見る良縁だった。


 まあそない訳で、この度、俺は財前ユウジになりました。ジューンブライドってやっちゃ。
 よろしゅう、よろしゅう。




20100612 町田
ツイッターの診断を元に考えました


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