忍足と一氏・○ つづき



 真上から見たらまるに見えるずけいが、横から見ればさんかっけーやしかっけーに見える。つまり、実際には円錐や、円柱やった。一面的な見方では、物事の本質は見えへん。


 財前に傷つけられたユウジは、はじめは話しかけても俺にも震えた。理由はよう分かっとる。せやから俺は焦らへん。じっくりは性に合わんのやけど、しゃあない。
 ユウジの隣に戻ってみれば、そこがどれだけ居心地エエ場所やったか思い出した。水を得た魚と言うんやろか。ユウジは鬱(ふさ)ぎがちで、うまく笑われへん。そんでも、苦はあらへん。ユウジが俺を嫌ってへんっちゅうことは確かや、それに普通以下になることもあらへんやろう。比較対象は財前。
 財前のしたことは許されへん。せやけど、結果的にユウジの隣に俺の戻る場所を作った財前には感謝や。

 財前は、道を見失ってしもた。そうして路頭に迷って、まるを描く。近づきも遠のきもせず、ただ、許される範囲でぐるぐると回る。足下をいくら見ても、正しい道は見つからんと、まだ気付いてない。ふと立ち止まって、見上げてみれば気付くことを。
 ずけいは、まるやない。目指すべき中点は、はるか上方にある。ずけいは、円錐やった。財前はそれに気付いてへん。きっと気付いた頃には、距離はさらに離れとる。急斜面を登る短いが過酷でリスクの高い道か、螺旋を描く冗長やけど確実な道か。どちらに気付こうと、選ぼうと、財前の思いは遂げられへん。財前が諦めへん限り、距離は広がり続け、近づくことはあらへん。財前が諦めたとき、はじめて答えが見える。
 財前は最初から方法を間違えとった。距離を見誤り、ユウジに怯えを抱かせてしもた。財前のやり方は、正しくない。近づくまでのプロセスを、無理にでも端折ろうとした。それが、一番の失敗や。
 無理やり近づく必要はあらへん。ユウジの望む距離で沿えば、二点の関係はへいこうせんになる。俺は、ユウジとへいこうせんの距離まで戻った。
 ユウジは俺に心を開きはじめた。ユウジは知られることを恐れとる。俺は知りながら、知らない振りでユウジにひたすら優しくしたる。知っているからこそ、ユウジに真実を望まへん。俺はユウジにただ優しくしたれる。それがユウジの望むことやから。財前にはホンマに感謝や。

 へいこうせんの距離は徐々に縮まり、いずれは一本のちょくせんになる。そして、お互いがお互いを恋えば、二点の距離はさらに縮まって、やがて一つのてんになる。



へいこうせん

ずけい おわり
20090313-20100601 町田

ずけいにご声援くださったお三方、
またご愛読くださった皆さん
に捧げます




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