どうでもいいなんて思っていない




俺には昔から気に食わねえ奴が一人いる、それは俺の叔母である空条名前だ。 親父とは10歳差の35歳、写真家で親父と同じように世界中を回ってやがる。俺がガキの頃何を思ってかは忘れたが、そいつに花を渡したことがある。その時もそいつはピクリとも表情を動かさずに受け取った、子供心に不気味だと思った記憶があるぜ。何考えてるのか全く読めねえ、食えない奴だ。

俺が成長していくにつれ、アマに「承太郎最近名前ちゃんに似てきたわね」と言われるようになった。俺はそれが気に食わなくてあいつがしないであろう格好や行動をしていたら不良のレッテルを貼られるようになっていた。そんな時期になるとそいつは殆ど音信不通になっていた。1人で仕事をしていやがるから生きているのか、死んでいるのか、どこの国にいるのかなんて分かりやしない。最後にあったのはいつだったか、顔だってもうほとんど覚えちゃあいない。1人で世界中回る仕事をするくらいだ、殺されたって死なないと思っていた。だからそんな奴が冷たくなった体で帰ってくるなんて夢にも思っていなかった。

名前が死んだと知らされたのはエジプトから帰ってきてすぐの事だった、エジプトのカイロで歩道に入ってきた車に轢かれたらしい。それは俺達がDIOと戦っていた日と同じだった。ジジイから聞いた話によるとDIOの乗っていた車が、歩道を走って追いかけてきていたらしい。おそらくそれに巻き込まれたのだろう、ギリッと奥歯に力が入る。

葬儀が終わり、遺品の整理をしていた親父がなにかを見つけたらしくそれを俺に渡してきた。それは写真だった、ガキの頃の俺の写真。親と写ってるのもあれば俺だけのもある、それらの写真に共通するのは全て表情が生きてるのだ。泣いている写真も笑っている写真も驚いている写真もまるで声が聞こえてきそうなくらい、生き生きしている。俺は写真の事は分からねえがこれはきっと相手を思っていないと撮れないのだと思った。あいつは見ていないようで見ていた。表情に表すことも口に出すことも無かったが、見守っていたのだと写真達が雄弁に語っていた。その時足りなかったパーツが埋まり、まるでそれを喜ぶようにじんわりと胸の中に暖かいものが広がった。

まだその場にいた親父が、別のものを渡してきた。また写真かと思ったが、それは押し花の栞だった。その花は俺がガキの頃あいつに渡した花で作られた栞だった、あいつはガキが渡した道端で簡単に見つけられるような花を栞にして持っていたのだ。なんと言っていいか分からねえ複雑な気分だ。勝手に写真を撮っている事への異議も、何故あんな態度をとったのか問い詰めることもさせず居なくなってしまった。

「最後まで気に食わねえアマだ。」


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