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 あれから日向子の暮らす福袋七丁目商店街ではいろんなことが変わってしまった。長屋の軒先にずっとかかっている不思議なてるてる坊主に触れるとどこかの空でゴロゴロと不安な音が鳴るようになったし、お豆腐屋さんは移動販売にラッパを鳴らさなくなった。もののけが来てしまうのだと、おじさんは困ったように笑っていた。

もののけによる影響は、街の些細なところから日向子の身近な子供たちのところまで迫ってた。帰りの時間が早まることや集団登校、下校はもちろんだが、そんな規則の変化の話ではない。
日向子の通う小学校で一斉に"狐の窓"というおまじないが流行り出したのだ。誰が言い始めたのか、誰も知らないそのおまじないは魔の物を見破るというものだった。決まった手順で手を組み、呪文を唱える、たったそれだけであとは手にできた穴を覗けば相手を見抜くことができる。
 いまだそれを行ったことで妖怪の類のものを見たという子は居ないが、それすらも恐ろしい噂の糧になる。

狐の窓でなにかを見てしまったら連れて行かれる。

あそこの空き教室にぽつんとある机は連れて行かれてしまった子の机。

いやいや、あそこ本当は空き教室なんかじゃなかった。

先生もみんな連れて行かれてしまったんだ。

見えないだけでみんなそこにいて助けを求めているんだと。

好奇心は噂話に、噂話は怪談に。ころりと転じてはよくないものへ。

"いなくなった子たちは道連れを望んでる"


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