その頃。
『きっとあの人もうすぐ来るわ』
「いきなりなんだ?」
神妙な面持ちでポツリとつぶやいた銀水。
『だってあの人の気配が近いんだもの。ていうか絶対居場所がばれているわ。だって今まさに近づいて来てるから』
「え、なんか怖いぞ」
『そうよ、あの人ストーカーっぽいもの』
「す…すと?」
『あどけなく言っているところが可愛い!! ねぇ私と友達になって☆』
「…考えとく。それよりそのすとーかーってなんだ?」
『未来で使われている言葉よ』
四百年ぐらい未来でね、と銀水は悪戯っぽく笑った。
「未来が…見えるのか?」
『見えるというより"分かる"といったほうがわかりやすいかしら。おかげでイケメンとか覚えたわ』
「意味は分からないが、くだらない言葉だということは分かる」
『それと、デートとか』
「…どっかで聞いたな」
『え、誰から?』
「ぬらりひょんという男だ。いつもぬらりくらりとして掴みどころがない」
そうだ、この女はぬらりひょんに似ているのだと咲喜は思った。
『………(ぬらりひょん? なんか聞いたことがある気がしなくもないような……)』
眉根を顰めて考え込む。
駄目だ、思い出せない。まぁ興味のない男は大抵五日で忘れるので仕方がないか。
「それにあの男は私がどこに行っても必ず追いかけて来るし……」
ブツブツと愚痴を言い始めた咲喜。
呆れているように話しているようだが、その男を嫌っている訳では決してないようだ。そのことに本人は気づいているのだろうか。
『大切にされてるのね』
「!? 何を言ってるんだ」
きっと。
その男は咲喜がとても大切なのだろう。
『私は貴女の未来は分からないけど』
なんとなく、私と水龍のように。
切っても切れない特別な。
『早く実ると良いわね!』
「何がだ?」
それから二人と一匹で会話していると、後ろからたくさんの足音が。
「銀水様!? ここにいらっしゃったのですか!!」
『げっ…蓮水達、何故いるのよ』
「"友達を作りに行ってきます"なんて可笑しな書置きなんてされたら誰だって探しますわ!」
『ハッ! それのどこが可笑しいというの? 毎日毎日人魚とばかり話してるなんて……つまんないじゃない!』
「そんな理由でたった一人徘徊されたら困ります! 第一、水龍様はどうしたのです」
『女にちやほやされてたから顔面蹴って逃げてきてやったわ』
「「「「まぁなんてムカつく男!!!!」」」」
「なんだ此奴ら」
「恐らく銀水の配下だろうな。つまり銀水は<姫>だ……となると、お前もここにいたら不味いかも知れないな」
「どういうことだ」
「その心配はないよ」
「「「「『!?』」」」」
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