その頃の男性陣。
「冗談も大概にしとけ優男」
「冗談じゃないって。僕水の神だよ」
「そんな飄々としてどこが神だ」
「ところで、僕の妻?知らないかい?」
「露骨に話を逸らすな! …なぜに疑問形?」
「結局気になるんだ。夫婦になったのか…なってないのか…よく分からないから」
「随分とあやふやだなオイ」
甘味処で二人とも団子を頬張っていた。ぬらりひょんに至っては当初の目的を完全に忘れて。
「大体、妻を放っといて何をやってる。愛想尽かされたんじゃねぇか?」
「それは無いよ」
「なんで言い切れる」
「僕と彼女は<絆>だからね」
「?」
訳のわからないことを言っている水龍に、ぬらりひょんはただ疑問符を浮かべるしかない。
団子を食べ終わり、水龍が金を払った。まぁぬらりひょんは被害者なので当たり前だが。
「僕がどうしようか悩んでたらさ、彼女顔面に蹴り入れてきてさ」
「分かる気がするがその女大分豪快じゃなぁ?」
そういえば、とぬらりひょんは思い出す。
自分が成人を迎えて間もないころ、同じことをされた気がする。
その女の名前は思い出せないが、自分がケンカを吹っ掛けたら顔面に跳び蹴りを喰らい、その後何度挑んでも同じことをされ軽くあしらわれたので諦めた。
余りにも綺麗な容姿だったのは覚えている。だが何故か、声も顔もはっきりとは分からない。
ボンヤリとしか思い出せないのだった。
「……今だったら倒せるか」
「何がだい?」
「なんでもない」
「そうか。でも君もいいのかい? 誰かを探してたんじゃ…」
「………あ」
そこでやっと思い出したぬらりひょん。すっかりこの男に流されてしまっていた。
「まぁ彼女を探すついでに探してあげてもいいけど」
「いや………」
「??」
気付いた。
もしもこの男が神だというのなら、簡単に教えていいものだろうか。
裏表がないように見えて実は…ということもあり得る。
悶々と考え込んでいると、ポン、と肩に手を置かれた。
「君が探しているのは、<黒蝶>かい?」
「!?」
ぬらりひょんにしか聞こえない、小さな小さな声。
余りにも落ち着いていて、冷静な。
「お前……」
心を読んだのか、と言おうとしたのを遮られる。
「伊達に神様なんかやっていないよ。何年生きてきたと思ってるんだい?」
意味あり気に笑う水龍。そんな彼にぬらりひょんはお前の年齢など知るかと突っ込む。
内心焦っているぬらりひょんとは真逆に、水龍はおっとりとした口調で続けた。
「安心しなよ。僕は何もしない、興味も湧かない。
神は気まぐれで、無気力なのさ……僕みたいな長生きしている者は特にね」
「水龍……お前、何年生きているんだ?」
「それより、僕が探してあげるよ。きっと妻?と一緒にいるだろう」
「また露骨に話を逸らした!! ……ありがたいが。つかその微妙な言い方やめろ」
「じゃぁやめる。気配なんてとっくにわかってたんだよ、銀水が捕まえたんだなって。なんで一緒にいるんだろうねぇ……二人とも危険が増すのに」
「待て」
「なんだい?」
「今銀水と言ったか?」
「うん」
銀水。
銀水………
「銀水だと!?」
「何、知ってたの?」
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