『わ、え、何この髪。黒くて艶々……私もこんな綺麗な黒髪になりたかったわ! あら? 目も綺麗……


羨ましい!!


「おい」


『どうやったらこんな奇跡が起きるのかしら! もう、容姿端麗で嫉妬しちゃうぞ☆』


「おい」


『プルプルスベスベ!! 何だっけ、たまご肌? 美肌の方がイメージがいいかしらね』


「おい!」


『はぁ……癒しだわ! さっきまで石鹸で滑って転んだような気持ちになってたのにホクホクしちゃったっ! 持って帰ろうかし




「聞け!!」




※現在の状況。



・人っ子一人いない森の傍の河原で咲喜が仙狸が一緒にいることに多少の不満を感じながらも「まぁあの男がいないだけマシか」と甘味を頬張って和んでいると、川の中から銀髪の(多分)美少女、銀水ががものすごい勢いで跳び出して来て最初水面の上を歩いていたところ咲喜の容姿が余りにも綺麗だったので耐えきれずにダッシュし、向かってきた仙狸の首根っこをガシッと掴み軽く投げ飛ばし咲喜に抱きつき頬ずりしている。




『ちょっと、(多分)外しなさいよ!! 確かにこのお姫様には劣るけども!!』





「何に対して怒っているんだ?」


突然のことに困惑している黒髪の少女を愛でながら、銀水は簡単に自己紹介をする。




『私は銀水。あーやっぱり和むわ〜』


「簡単すぎるような…私は咲喜だ」


『咲喜ちゃん? 咲喜様?』


「………」


『ちょっ、無視して甘味食べないでよ』


「離れろ妖怪」


『あらばれてた?』


「突然川の中から出てきたら誰でも化け物だと思うぞ」


『あら何よ黒猫。水の中から出てきて何が悪いの? 水を馬鹿にしたわね!!』


「なんだ水を馬鹿にするって。妖怪のくせに」


『貴方…いや、糞猫も妖怪でしょ? さっき私に投げ飛ばされたくせに偉そうね』


「どうして言い直す。お前は誰だ」


『銀水よ』


「何が目的だ?」


仙狸の言葉に、咲喜も警戒したように睨んでくる。


『当たり前じゃない』


からりと銀水は笑った。









『私美少女大好きなのよ。だから偶然見つけて、友達になりたくて貴女に抱きついただけ』










「「…………」」


『あら、どうしたの? 驚いた顔も可愛いわね!!』




この可笑しな性格、誰かに似ている気がしてならない。




銀水は目の前にいるのが黒蝶だと気づいていなかった。




『安心しなさい。敵意は無いわ』




無邪気に笑っていた笑顔は、突然大人びた微笑に変わる。

『私は人魚。ここら辺の妖怪とは違って肝なんて食べたりしない』

「人魚だと?」

「知ってるのか仙狸? 私も聞いたことがある気がするが」

「水を操る妖怪だ。確かその地の季節や気候を操っていると聞いたことがある」





『なんだ知ってたの? 思いっきり糞猫に向かって威張ってやろうと思ったのに』






「性格最悪だな」


仙狸に蔑みの目を向けられても気にしない。


『それに操ってるわけじゃないわ。手助けよ、プンプン』


「……………この妖怪大丈夫か?」


終いには咲喜に心配されてしまっている。


「所で一体なんで流されてたんだ?」

「馬鹿だからだろ」


『黙れ糞猫。聞いてよ咲喜様。夫?がムカつくの。女に囲まれて私という妻?がありながら無視していつまでもその女たちと爽やかに談笑して……もう嫌になって顔面蹴って逃げてきたわ』






「「何故に疑問形?」」






咲喜達の質問に銀水は苦笑するしかなかった。






『夫婦になったのか…なってないのか…わからないから』



「随分とあやふやだな」


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