「ん…あれ、私…」


目を開けると知らない天井が広がっていた。私、あの後どうしたんだろう。泉があの子に告白したところを見て…記憶が途絶えている。部屋には所々、雑誌が散らばっていて、けど殺風景な部屋で、いかにも男の子の部屋、という印象だった。まだぼーっと一点を見つめていると、ドアが開いた。


「目ェ覚めたか?」
「た、じま…何で…」
「だって、ここ俺ン家だもん。お前が目の前で倒れたから、部屋に運んだんだ。大丈夫か?」


田島は、ニヒっと笑って水の入ったペットボトルを差し出した。ありがとう、とペットボトルを受け取って一口飲む。冷たい水が喉を通っていく感覚に、落ち着きを取り戻せた。そうか、私あの後倒れたんだ。どうりで記憶がないわけだ。


「色々とありがとう、田島。じゃあ私、帰るね」
「もう9時過ぎてるし、泊まってけよ」
「え…でも…」
「俺はリビングでも寝れるし!」
「で、でも…」
「いいから、泊まってけって!泉の彼女に手なんか出さねェから」
「あ…」


泉の彼女、それが胸にぐさりと刺さった。何だか虚しくなって俯くと、田島はいつもは出さないひどく優しい声で「どうした?」って隣に座った。だから、私の涙腺はまた壊れて、泣いてしまう。田島は私の拙い言葉でも、ゆっくりとしっかり聞いてくれた。田島ってこんな優しい奴だったっけ?


「じゃあ、泉はお前のこと…」
「うん…でも、分かってたことだしね」
「お前はそれでいいのかよ」
「うん、私が我が儘言っちゃったからいけないんだし…」
「何だよ、それ…」
「たじ…っ」


急に低くなった田島の声に横を向くと、強い力でそのまま押し倒された。反射的に閉じた目をゆっくり開けると、真剣な顔をした田島がいて。「何?」なんて言えなかった。そしたら田島は真剣な顔をしたまま、艶っぽい声で言った。


「泉の彼女だからって我慢してたけど、もうやめた」
「え…?」
「もう我慢しねーから、何されても文句言うなよ」
「えっ、ちょ…田島っ…」


首筋をぬるぬると這う舌の生々しい感触に、思わず身体が反応する。いつか泉もあの子にこんなことするのかな。だったら今、田島に何をされてもいいかもしれない、そんな風に思いはじめた自分がいた。