あんなことがあった後は、どっちもが気まずくて。泉と話さなくなってから、もう一週間が経っていた。このまま自然消滅しちゃうのかな。それだけは絶対に嫌だ。でも、きっちりケジメをつける覚悟も、我が儘を言う勇気もない。結局、私は都合のいい女のままで。こうして待っていればまた泉が現れて、優しく抱きしめてくれるんじゃないかって期待してる。本当に、馬鹿みたい。ため息を一つ吐いて、もう帰ろうと私は立ち上がった。


家に帰るには第二グラウンドを通らなければならない。足早に通り過ぎようとして、思わず足を止めた。少し焦ったような泉の声と、もう一人。あの子だってすぐに分かった。聞かないほうがいい。聞いたらまた傷付いてしまう。分かっているのに、足は動かなかった。


「待てって!」
「離してよ。孝介には関係ない!」

ほら。

「関係なくねェよ!泣いてんじゃん、お前…」
「孝介には彼女がいるじゃん…だから、もう優しくしないで…」

ほら、また。

「優しくするよ…」
「だから!期待しちゃうんだってば…」

ほら、だから。

「期待しろよ」
「え…?」
「ずっと好きだった」
「何、言って…」
「彼女がいても、お前のことがずっと好きだった」


だから聞いちゃいけなかったのに。傷付くのは目に見えてたのに。どうして私は、自分から糸を切っちゃったんだろう。