次の日、いつもより遅く学校へ来た。遅刻ギリギリに行けば泉に話すこともなくなる。ずるいかも知れないけど、今の私は泉と向き合う勇気はなかった。また昨日みたいに怒られるのは怖い。嫌われたくない。嫌われるくらいなら、いっそ忘れるまで話さない方が幾分マシだ。今日は泉に関わらないようにしよう。避ける、と言ったら大袈裟に思えるけど、周りからみたらやはりそれは異色な光景だったらしい。昼休み、友達はお弁当を食べながら、えらく心配した様子で聞いてきた。



「あんた、泉くんと別れたの?」
「別れてない…と思う」
「思うって…それって自然消滅ってやつ?」
「え…」
「そういうことでしょ」
「……」


別れたくはない、けど泉と話し合う勇気もない。悶々とした中、昼休みも終わりいつの間にか放課後になっていた。


「おい」
「え?」


帰ろうと荷物の仕度をしていると声を掛けられて、顔を上げると怪訝そうな顔をした泉が立っていた。また、気に障るようなことをしたのだろうか。気まずそうに目を逸らせると、泉の顔はもっと歪んだ。


「何で避けてんだよ」
「避けて、なんか」
「じゃあ、何で目ェ合わさねェの」
「……」
「昨日のことなら・」
「いいの!」
「は?」
「昨日は私が悪いんだし。ごめんね、本当に」
「そうじゃね・」
「じゃあ、また明日!」


昨日の話を持ち出されるのが怖くて、一方的に話を終わらせて帰ろうとするも、泉はそれを許さない。腕を掴んで、身体を引き寄せた。やめて、期待しちゃうよ。


「離して」
「無理」
「泉、痛いって」
「うん」
「お願い、離し・」
「ごめん」
「え?」
「昨日のことなら謝るから。だから、避けんなよ」
「……うん、もういいよ」


この人は本当にずるい人。私の不安も怒りも全部抜き去っていっちゃう。だから私は別れられないし、また好きになっちゃう。嗚呼、いつまでこんなこと繰り返すんだろう。