ベッドで眠る彼女、横で突っ立ってる私。先生は「気を失ってるだけだから。安静にしてれば大丈夫よ」と言って保健室を出ていく。私は軽く会釈をして先生を見送った後、眠る彼女を一瞥した。どうして私なんかを庇ったんだろう。罪悪感に苛まれている中、扉が荒々しく開いた。そこから現れたのは、血相を変えた泉が。
「い、ずみ…これは・」
「何やってんだよ、お前」
「え…」
「お前がぼうっとしてっから、こいつは…!」
「……そ、だよね」
泉が怒ってる。私に、あの子のことで。あなたの彼女は私なんだよ?私の心配は、してくれないんだね。もう何がなんだか分からなくなって、俯いた。泉は気付かない。まだ怒ってる。泣きそうになるのを堪えて、私は震える声を抑えて口を開く。
「ごめん、ね…」
「謝んのは俺じゃなくて、こいつにだろ?」
「そっか…だよね…」
耐え切れなくなって、私は保健室を飛び出した。もちろん泉は追いかけて来ない。分かっているから余計に空しくて。すぐには教室に戻る気にはなれなくて、5時間目は屋上でサボってしまった。
………
休み時間、教室に戻ってちらりと泉を見るとまだ機嫌は悪そうで。私の胸はまたちくりと痛んだ。
「あ。あんた何してたのよ!」
「ごめん、サボってた」
「もー…!」
結局、泉とは一言とも話すことなく放課後がやってきた。嗚呼、今日も…
「今日、泉くんと帰るんじゃなかったの?」
「うん…なくなっちゃった」
「は!?何で」
「もう終わりかなあ…私たち」
「……」
口に出せば楽になるかなって思ったけどそんなことはなくて。代わりに涙がぽろぽろと溢れてきた。オロオロと慌て出す友達に、今できる精一杯の笑顔で「大丈夫」といって教室を出た。
こうして今日も私は一人で帰る。