それから泉とあの子が付き合い始めたと聞いたのは、一週間後だった。それは意外に簡単で、えらく早く私の前に現れた。嗚呼、やっぱり私はいらなかったんだな。ごめん、まだ素直に祝えないや。


「なあ、」
「何ー?」


ベンチから足を投げ出してブラブラさせながら、空を見上げる私と田島。泉と別れてから田島といることが多くなった。辛いとき、弱くなりたいとき、必ず隣には田島がいてくれて。本当の彼氏っていうのは、こんな人をいうんだろうなって思った。追い掛けるだけの恋は、もう疲れたから。


「お前、何とも思わねーの?」
「何が」
「泉とあいつが付き合いだしたこと」
「嗚呼…。何とも思わないわけないじゃん。今すぐにでも泣きたいくらい」
「…ごめん」
「何よー、冗談だって」


少し笑って肩を叩くと、「そっか」と言って田島も笑った。この人を好きになれたら、どんなにいいだろう。きっと、幸せになれるんだろうな。


「今さ」
「うん?」
「俺をすきになれたらいいなって思っただろ?」
「……ううん」
「嘘つくなよ」
「…ごめん」


田島は鋭い。色んなことが見えてないようで、実は一番分かってる。嘘はつけないな。

「ねえ、田島」
「ん?」
「私の中から泉が消えてくれないの…」


そして頬がまた濡れていく。もう泣かないって決めたのにね。