空がオレンジ色に染まる頃、仲の良い友達は笑顔で手を振り教室から去っていく。私も同じように手を振って見送った。今日は彼氏とデートするんだって朝から幸せそうに笑っていて、その顔を見て私の顔もつい綻んでいた。


(いいなぁ…)


特別、彼氏が欲しいわけじゃない。でも幸せそうな友達を見ていると、すこし羨ましくなる。


「よし…!私も早く終わらせちゃおう」


今日は日直で、戸締まりと日誌は私の仕事。もう教室には誰も残っていなくて、日誌を書けば帰れる状況だった。それよりも。本来、日直は男女一組でやるのだけど、今日の日直の男子は一向に仕事をせず、あまつさえ誰なのかすら分からないのだ。相手さえ分かれば、頼みに行けるのに…。そんなことを考えながらまだ真っ白な日誌を見て、また一つため息をついた。


そんな時、教室の後ろのドアが荒々しく開いた。びっくりして振り返ると、そこに泉くんが立っていた。


「泉くん…どうしたの?」
「…日直だから」


どうやらもう一人の日直は泉くんだったらしく、わざわざ部活を抜け出してきてくれたようだ。別に特に仲が良かったわけじゃなかったけど、こうやって戻ってきてくれたことに、心の奥がぽかぽかして、嬉しくなった。


それからまだ白紙の日誌を二人で仕上げにかかるけど、泉くんはあまり喋らなくて、私が一人でじゃべってるみたい。急に黙り込むのも気まずいし、一人話題を紡いでいると、浮かび上がる一つの疑問。


「あれ、今日の日直って泉くんだっけ?」


日直は大体が出席番号順だし、私と泉くんの苗字じゃどう頑張っても、一緒にはなることはまずない。ならどうして?そんな率直な疑問に、泉くんの身体はびくんと跳ねて、余計に口を閉ざした。私、ほんと空気読めてないかも。おそらく聞いちゃいけないことだったのだろう。この気まずい沈黙をどうにか打破したくて、私はまた口を開いた。


「そういえば野球部って・」
「……なんだよ」
「はい?」


今日、初めて聞いたかもしれない泉くんの言葉は、本当に小さくて語尾の方しか聞き取れなかった。もう一度、と促すと、泉くんらしくない赤い顔で今度ははっきりと言った。


「好きなんだよ、お前が。だから、代わってもらった」


今度は私が黙り込む番となった。告白なんて、されたことは勿論ないわけで。付き合って、と言われたわけでもない。返事をどう返していいか分からず、私は無心で日誌を書いた。

そのせいか思いの外、早く終わってあとは担任に渡すだけ。


(あれ…何か私残念とか思ってる?)


ちらりと泉くんを覗き見すると、ばちっと目が合った。咄嗟にパッと逸らした。頬が、熱い。もう一度、泉くんを見ると、私と同じ顔してそっぽを向いていた。何だか胸の奥がドキドキして、この気持ちを早く泉くんに伝えたくて。私は頬を赤く染めたまま、口を開く。



「あの…さ、泉くん」
「何だよ」
「私、泉くんのこと好きになっちゃったみたいなんだけど、どうすればいい?」


日直の仕事は、まだ終わらない。







あ の の ぼ く の べ て だ っ た













title by メルヘン
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ゆい様より、泉で甘めの告白される青春のお話、でした。
あ、ああああの、甘くなってるでしょうか(・・;)??
最終的に女の子に言わせちゃうヘタレな泉になっちゃいましたね…
本当に拙い文章で申し訳ないです(>_<)
リクエストありがとうございました!
今後とも、色欲をよろしくお願いします!