(また…女の子と話してる…)


そんな姿を横目に私はため息を一つついた。女の子と話をしているのは彼氏である泉くん。付き合う前は女の子とそんなに交流もなかったのに…。付き合いだしてからは、自分から積極的に話しかけるようになった気がする。最初はヤキモチ妬いてほしくてやってるのかと思った。でも、どうも違うようだ。泉くんの心は、読めない。


「それって、セフレじゃない?」
「違うよ」
「何が違うっていうのよ」
「ヤッてないもん」
「は?」
「泉くんはいつも触るだけ。昨日もあっちこち触られて、イク寸前に止められた」
「……あんた、遊ばれてるんじゃない?」


そんなの自分が一番自覚してるよ。はあっとまたため息をついて、私は鞄を持った。今日は部活がないから一緒に帰ろうって言ってくれたのに、女の子と話してばっかでちっとも終わりそうにない。私に気付いてるのに、だ。


「意地悪…」


ポツリと呟けば泉くんはやっと女の子と別れて鞄をとった。心なしか、すごく嬉しそう。泣きそうになるのを、ぐっと我慢して、核心に触れた。


「……泉くん」
「んー?」
「私って、泉くんの何?」
「彼女じゃねーの?」
「今のままじゃ、セフレだよ…」
「セフレって、またヤッたことねぇじゃん」
「そ、れは…泉くんが、挿れて、くれない…か、ら…」
「だってお前、挿れてって言わねぇし」
「言わなきゃいけないの!?」
「言わねェとわかんねぇじゃん。ちゃんと言ってくれんなら、何でもするけど?」


私は愕然とした。言ったら何でもしてくれるって…もしかして。


「あ、のね…女の子と話すの、控えてほしいんだけど…」
「無理」
「さっき何でもするって言ったじゃん!」
「それとこれとは別だろ」
「うー…」


ヤバい、本気で泣きそうになってきた。泉くんの馬鹿。瞳いっぱいに涙を溜めている私を見て、満足そうに笑ってるのは何故?


「今のは反則だろ…よし、早速俺ん家でヤるか」
「…泉くんの馬鹿」
「今日はちゃんとイカせてやるから。ほら、行くぞ」
「っ、そういう意味じゃ…」
「じゃあ、何だよ」
「……あの子と話すのやめて」
「だから無理だって」
「どうして?」


そんなにあの子がすきならあの子と付き合えばいいじゃん、なんて言えなかった。何だか本当に泣きそうになって俯いた。そしたら泉くんは耳元で、艶っぽい声で囁いた。


「……お前の泣きそうな顔、すげえ好きだから」


恥ずかしいのと、予想もしてなかった言葉に私の頬は一気に紅潮した。分かった、泉くんはドSなんだ。私を困らせたいんだ。泉くんの馬鹿。でも、満更でもない私はMなんだろうか。


「私も…泉くんのその顔好きです」
「……ドM」





   
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