Once Upon a Time | ナノ


▼ これはとある村に伝わる童話です

むかしむかしのおはなしです。

森の奥深くに、ひっそりと建っている灰色のお城がありました。そのお城には、とてもとても強く、そしていじわるな魔法使いが暮らしていました。

魔法使いは、拾い子である弟子とそれなりに面白おかしく暮らしていました。
しかし、ある月の夜。
魔法使いはとりかえしのつかないあやまちを犯してしまったのです。






お城の扉を、コンコンと叩く者がおりました。さむいさむい、そこらじゅうがまっしろに染まってしまうような雪の日のことです。
魔法使いが扉を開けてみると、そこにはしわくちゃのおばあさんが立っていました。

「こんな雪の日に、いったいどうしたのですか。さあさ、なかに入って暖炉にあたってください」

魔法使いはおばあさんの手を引いて、城の中へ入ろうとしました。おばあさんの手は氷ほどの冷たさで、これは大変だ、と魔法使いは思いました。

そのときです。
おばあさんが、潰れたヒキガエルのような声で何事かぶつぶつ呟きました。魔法使いは聞き返そうとしましたが、その前に崩れ落ちてしまいました。
床に倒れこんだ魔法使いを見下ろして、おばあさんはまだ何かを唱えています。

すると、なんということでしょう。
魔法使いのつるりとした肌から、もさもさとチョコレート色の毛が生えてきたのです。
硬そうなツノがにょきにょき生え、指はなくなり、その代わりに鋭い爪が現れました。

やがて魔法使いが完全に獣の姿になると、おばあさんはローブから一輪の薔薇を取り出して、それをそっと魔法使いーーー野獣の胸の上におきました。

そして、跪いて薔薇の上に右手をかざしました。
「人を愛し、人に愛されよ。さすれば汝は救われる」
凛とした、明朗な声でそう唱えました。先ほどまでのしゃがれ声とはまるで違います。その声に呼応するように薔薇がぼうっと一瞬あおく輝いて、野獣の心臓に溶けて消えました。


こうして、魔法使いには呪いがかけられました。

いまもこの呪いを抱えて、野獣は森の奥の城に潜んでいるそうな………。






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