ロマンチストの電波どくせん(上)

そわそわ。

午後4:30分。夕暮れが近付いてきた時間、僕こと橋剣由佳(はしつるぎゆか)はとある公園の石像の前にいた。
大体この時間帯は夕飯を作っている僕だが、今日は別。何故かというと、先輩から、こんなメールが届いたからである。
"ごめんね、今日の4:30に公園の前で会えるかな?話したいことがあるんだ…"
改行も何も無い、そっけない文章だが、僕は考えていた。
ーーもしかして、告白されるんじゃあ……!?
夕暮れどき、待ち合わせ、話したいことが……、これだけの要素があって告白じゃないなんて有り得ない!!!ぐっと拳を握りしめ、軽くガッツポーズとる。……まだ公園にぽつりぽつりといる母親達や子供達が、僕を見ていることに気付いた。羞恥心を隠しつつ、ガッツポーズを戻して握り拳を開く。ああ、恥ずかしい。



午後6:00。もうすっかり夜も更け、辺りにぽつぽつといた人々は皆帰ってしまった頃。
……おかしい。
僕はまだ先輩がやってこないことに気付いた。約束の時間は午後4:30、腕時計をふと見てみたら現在もう6:00だ。大幅に遅れている。これはおかしい。僕はもう一度そう思った。
約束を破るような先輩ではないし、第一先輩自身が時間を設定したのだ、他に用事がある訳でもないだろうに。更に、もし遅れてしまうのなら先輩はきちんとメールを送ってくれるはず。なのにどうだ。何度携帯を見直しても、そんなメールは一切送られてきていない。この時間までに送られてきたのは迷惑メール1通だけ。電話を掛けても、メールを送信しても、何も返ってこなかった。
「……何か、あったんだろうか……」
ぽつりと呟くそれは、少し肌寒くなってきた夜に虚しく飲み込まれた。



"先輩、今から迎えに行きます。"
急いで打ち込んだその一文を送信して走り出す。雨でぬかるんだ土に足を取られて転けそうになりつつも、僕は思いっ切り地面を蹴った。
何故忘れていたんだろうか。ゆらりと揺れる幻覚を見ながら僕は考える。
……先輩こと、風夏麒麟(ふうなつきりん)には、とある特殊体質が備わっている。それは、【大きな衝撃を受けると死亡して、死体になる。】というものだ。無論、生き返らせる方法があるのだが、そう何度もしたくはないもので、僕は、先輩が死なないように、何時も先輩の面倒をみている。(文字通り、何時もだ!)そんなこんなで、同じ家に住んでいる先輩と今日離れたのは、件のメールが送られてきたからであった。
そういえば最初からおかしかったのだ、何時も一緒にいるんだから、態々待ち合わせなんてしなくても、その場で言えばよかっただろう。先輩も可愛いところがあるんだなあ。なんてほのぼのとした気分で了承したのが間違いだった!!
いつも何時も先輩の面倒をみていたのは僕だったから、少し油断してしまったのだ。これで僕なしでは生きていけないだろう。だなんて!!!傲慢にもそう思い込んでしまっていたのだ。……きっと足りていなかったんだ、もっともっと世話をしておくべきだった!!!!!
「待ってて下さいよ!絶対に!!!」

僕と先輩の物語はまだまだこれからだ!(嘘)


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