導入


 


 目の前に、風夏麒麟(ふうなつきりん)が死んでいる。
 



 全くもって完全なる死体である。
 数時間前は取材だなんだと熱されたアスファルトの上を駆けずり回っていたその四肢は、じゅうじゅうと焼かれ、良い匂いを漂わせながら虫たちを惹きつけていた。

「まったく、まさかこんなところで死ぬなんて。人様に迷惑をかけるのは止めてくれっていつも言っているのに、困った人だなあ。」

 ずりずりとその体を引き摺りながら、僕はぶちぶちと文句を垂れた。仕方無いだろう。風夏麒麟がいくら平均よりも軽い体重だからって、死んでいるのだから、運んでいる僕には風夏麒麟の全体重がかかってくる。これで死んでいなかったのなら、きっと今よりもずっと持ち運ぶのは楽なはずなのだ。……まあ、死んでないのなら運ぶ訳がないのだけれど。
 くすくすと笑いながら、今日も僕は風夏麒麟の死体を運ぶのだ。






死体、息(遺棄)をしています!!


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