2018.01
ーー私は白の中に存在していた。
音さえも吸い込む白銀の中に立っていた。
「……あ、」
……声を出した。白の中に吸い込まれ、すぐに消えた。
まるで、秘密を吐き出す穴のようだ、と思った。王様の耳はロバの耳だと秘密を吐き出した穴。
けれど。すべての音は白に吸い込まれ、消えてしまうのだから、あの穴よりもよほど優秀だと思った。
……どうせなら、すべての音が吸い込まれるのなら、言えないことを言ってしまおうか。白の中、私はひとりなのだから。
「……愛してる」
……声を出した。白は声を吸い込み、消える。
愉快な気分だった。言葉にしてはいけないと呑み込み続けてきた"ソレ"は、こんなにも簡単に溶け込んでしまったのだから。
「愛してる。愛してる。……愛してた」
続けてそう言った。
音はとける。
思いはとける。
……言葉はとけた。
ーーどうしようもなく、叫び出したくなった。
……虚しい。
どうしようもなく、虚しかった。
この言葉に、意味はあったのだろうか。この気持ちに意味はあったのだろうか。……この想いに、意味は。
「……はは、」
無性に会いたくなった。
この気持ちを伝えたくなった。
……けれど、それは出来なかった。
(許されなかった)
「ああ、」
幽平、
「会いたいなあ、」
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