幸福ふらいあぅえい


「先輩っ」

先輩こと風夏麒麟(ふうなつきりん)が行方を眩ませたのは一週間前の出来事だった。何の前触れもなくふっと消えた先輩に僕は酷く焦り、ここ一週間、食事もあまり喉を通らなかった程だ。
……そして、今日。先輩に付けているGPSで居場所を特定することが出来た。案外近めの場所だったので、準備もそこそこに僕は急いで先輩の所へと急いだ。すると、先輩は携帯を持って屋上の縁で僕を見て、意味深に笑っていた。という訳だ。

「ねえ、後輩くん。……分かってたでしょう?」

そう言って、先輩は笑みを更に深めた。……分かっていた?僕が?いやいや、そんなまさか。
今まで見たことのない笑みを浮かべる先輩に不安を覚えながら、僕はじりじりと先輩に近づく。落ちたところで生き返るとはいえ、目の前で先輩に落ちられるなんて真っ平御免だからだ。

「何がですか、先輩。僕は何も分かりませんよ、エスパーじゃあないんですから」
「ううん。後輩くんはちゃんと分かってるよ。だってほら……ね?」

そう言って、先輩は屋上から飛び出した。笑いながら僕の視界から消えた先輩の手から零れ落ちた携帯は割れている。


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