黄泉がえりの独白


「……後輩くんが、いる。大きなムカデに手首をもぎ取られて、私に笑いかけている」
赤い色の飴をだらだらと手首から零して、甘い匂いを振りまいている。多分いちご味?
どうやら後輩くんは手首をもぎ取られても平気らしい。もしかして私の生き返りが感染ったのかもしれない。それにしてもおかしいけど。
まず、私の身体がもぎ取られても飴は出ないし、傷が痛くない訳じゃないからだ。……もしかしたら、ちょっとずつ身体の性能が変化したのかもしれないけど。


……なら、試してみればいいよね?
「試してみればいいと思いますよ」
うん。後輩くんもそう言ってることだし。試してみようかな。
ぞろり、とムカデが動き、私の腕を掴んだ。ぶうん、と羽音がしたので上を見れば、にこやかに笑う大きな針を持つ虫がいた。
「どうすればいいかな?」
2人にそう聞くと2人は笑って、揃って後ろを指さした。振り向くと手首と目玉がない後輩くんがにっこりと笑ってくれる。私はそんな後輩くんに笑い返した。
「どうぞ」
そう言って後輩くんは手首の断面から自分の骨を抜き出して、渡してくれた。
「途中でばきりと変な音がしていたので、多分折れたんだと思いますよ。これなら試しやすいでしょう?」
後輩くんの言う通り、骨は変なところで折れていて、とても使いやすそうだった。
「ありがとう後輩くん!」
「いえいえ、お役に立てなら何よりですよ」
後輩くんはそう言って私の前でにこにこと笑っている。いる。……いる?
後ろを見ればムカデと虫と大きなダンゴムシのようなものと大きなアリが沢山。全員が笑って私を見て、いる?いた。いた、
骨を手首に突き刺す。ぐぐぐ、と力を入れて横に引くと、ぱっくりと手首が割れる。腕を上げてみれば、ぶらりと手首が垂れ下がっていた。
どうやら完全に切れてはいないらしい。じくじくと痛みがする。もう1度骨を突き刺して、ぐっとひくと、ごろりと手首は床に落ちた。又は地面に、マットに、外に、海に、足に、
あ、
あ、ああ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
痛い
たす、け


【風夏麒麟:ロスト】



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