定義と討論


「お題。愛おしいということの定義について」

  ぴ、と人差し指を立て。詩歌はそう言う。

「人の行動に可愛らしさを覚えること」

「とても気の毒だと思う様」

「ああ、それもあるね」

 ぽつりぽつりと互いに定義を言い合うこの瞬間は、何よりも大切な時間だ。僕は新しい知識を得られるし、彼女は新しい語彙や観点を得ることが出来る。

「じゃあ次は僕から。お題、愛情を感じる時」

 少しの間、沈黙が流れる。互いの境遇を考えれば、仕方のないことだろう。だからこそ、得られるものがあるのだけれど。

「……愛しい人に、痛みを与えられた時」

「なるほど、……愛しい人から与えられた行動や言動全て」

「……これ以上思いつかないんだけれど」

「僕もだ」

 気まずげに目を合わせ、ぎこちなく笑い合う。……なるほど、彼女が僕に当たりが強いのは、愛情表現だったのか。

「まあ、いいわ。次は私ね。お題、依存症とは何処からなのか」

「相手の全てを独占したいと考え始めた時から」

「相手を殺したくなった頃から」

「相手がいなくなった途端死にたくなるようになった頃から」

「相手が他人はおろか友人と話しているだけで嫉妬するようになった頃から」

「……君、そんなことを考えていたのか」

「貴方こそ」

 やはり、言い合いは良いものだ。こんなにも素晴らしいことに気付けるのだから。彼女のことが、もっと知りたい。……これは、いけないことなのだろうか?こんなにも強欲になるだなんて、今迄の僕からは想像もつかない。良い傾向なのか、悪い傾向なのか。
 言い合いはまだ暫く続く。僕は少し微笑むと、新たなお題を口にした。




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