死体いきをしています。(橋剣&風夏)
「後輩くーん!!!」
「……はいはい。なんですか?先輩」
そう言って、走って来た先輩を抱きとめると、先輩はなにやらご機嫌のようで、にこにこと微笑みながら僕を見上げる。
「あのね!私ね!!今度引っ越す事になったんだー!」
「……は?」
一瞬、景色が止まった。
「……後輩くん?」
心配そうに僕を見つめる先輩を見て、心を落ち着けるように、息を吐いた。……大丈夫だ。少し整理しよう。……まず、先輩は引っ越すだなんて言ったが、これは嘘だ。理由は、先輩のお母様からそんな事を聞いた覚えはないから。いつも先輩のことを教えてくれるお母様が、こんな重大なことを話さない。そんなことはありえなかった。むしろ先輩に話すよりも前に教えてくれそうだ。
「でも、本当だったとしたら、離しませんよ」
「うん?どうしたの後輩くん?」
ぎゅう、と先輩を抱き締める力を少し強める。僕が死なない限り、まだまだ先輩を離す気はない。そう考えながら目を開いた時、ふとカレンダーが目に入った。4月1日。……なるほど。
「ああ、いや。エイプリルフールですか、先輩」
「うん!よく分かったねえ!」
「そうですねえ。……そういえば先輩、知ってますか?」
「なあに?」
「エイプリルフールに吐いた嘘って、1年間叶わないらしいですよ」
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