榛月路殺害事件
或る館に5人の男が集まった。
その男達はこの館の主人と深い親交があり、今夜行われるらしいパーティーに招待されたのである。そのパーティーとは、この館の主である榛月路(はしばみ つきじ)の生誕を祝うものだ。
会場でわいわいがやがやと話に花を咲かせていると、「すみません!遅れました!!」そう言って突如ある男がやって来た。どうやら郵便屋のようだ。
男が差し出した荷物を受け取ると、ずしりと持っていられないほどの重みを感じ、堪らずその荷物を地面へと下ろした。もしかすると中に入っているのは重くて大きいもの、例えば大きな石像でも入っているのかもしれない。とりあえずは榛の元へ運んでしまおう。そう考えた一人の男は、もう一人の男を呼び、二人で榛の部屋へと荷物を運んだ。
榛の部屋へと辿りついた二人はどさりと荷物を置いた。ふと掛けられた時計を見ると、8時40分。荷物を運び始めてから、もう30分も経っていた事に気付いた。
苦笑しつつノックをする。こんこん、と小気味のいい音が響き、男は榛が返事をするのを待った。
……おかしい。
男がそう考え始めたのは、榛の部屋をノックしてから20分後のことだ。待てども待てども目の前の扉からは、榛の声は愚か、生活音さえも聞こえない。
もしかして、何かあったんじゃあ……?
段々と心配から焦り始めた男は、一言「月路さん、入りますよ」と言ってドアノブを捻った。がちんと固く閉ざされているはずのドアロックは、どうやら不用心にもかかっていなかったようだ。なんの抵抗もなくすっと開いたドアにどこが呆然としながらも、これ幸いと言わんばかりに榛の部屋へと押し入った。
「月路さ、……!?」
呼びかけようとした男の目に入ったものは、床に横たわったままぴくりともしない榛月路、そしてその体を覆うように流れ出ていた、大量の赤黒い血液だ。
……全ては、此処から始まるのである。
[ 2/40 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]