改悪:リライト


「や、やった…のか?」
『えぇ多分。ほら、そこの空間とか崩れかけてますし。』

「意外と終わってなかったりしてねぇ?」
馬鹿にするような声音で話すカノはいつもの様にニヤニヤと笑っているのだろう。
もし笑っていたのなら石にしてやろう…そう思いつつマリーはカノのいる方向に振り向いた

「あ、あれ…?」
カノは確かに馬鹿にした口調でペラペラと今も喋っている…
喋っている…が、
(え…?どうして…?)


「カノ、欺けてないよ?」

とても不安そうな顔なのだ。




「−え…?」

ぺたぺたと顔を触る

「あ、え…?」

目の前が滲んできた

「う、嘘…本当に…?」


「うん」










「まったく素晴らしいな、君達は。」
「本当にそうだね。私も驚いたよ。」
「君達は力を合わせ、歴史を、事実を、真実を。」
「逆行し、改変し、塗り替えて。」
「そうしてこの瞬間を掴み取った。」
「まったくもって、素晴らしい。」
「―では、そんな君達には真実(ほうしゅう)を教えてあげよう。」(「―では、そんな君達に敬意を表して真実を伝えてあげようじゃあないか。」)

「楯山文乃は自殺したのではない、殺害されたのである。自分の意思で殺されたのである。」
「如月伸太郎は楯山文乃を殺害したのである、彼女にそう依頼されたのだ。そして自分の意思で殺したのである。」
「そうして我々はカゲロウループへと意図的接触を行い、アザミと知り合ったのである。」
「そうして皆で集まり、画策し、計画を実行したのである。」
「その名も、絶対絶望作戦。」
「かくして作戦は開始され、8人の少年少女が巻き込まれた。…いや、正確には9人が正しいか。」
「巻き込まれた少年少女らは奔走した。自分に起こった悲劇に嘆き、その事実を改変しようとした。いや、してしまったのだ。」
「それが禁忌であることも知っていながら、見て見ぬ振りをしていたのだ。」
「だから、いよいよしっぺ返しがきたのだ。」
「少年少女らは罪を認め、嘆き、そして絶望をする。」
「自分達の犯した罪は忘れて。そうしてただただ泣き叫ぶのだ。」

「―どう?今まで真実だと疑いもせず信じていたものが嘘だったことが分かった気分は。」
「嬉しいのかい?悲しいのかい?…それとも、また泣き叫ぶのかい?鹿野修也が考えていたことは強ち間違いではなかったのさ。」
「まぁ、私は彼に殺されたくて。」
「俺は、あいつを殺したかった。とんだ相思相愛なんだけれども。」
「しかしそれでも相思相愛、彼が私を愛し、私が彼を愛しているのは真理。他者につべこべ言われる筋合いはないの。」
「分かったのならその目付きを止めなよ鹿野修也。」


「―おや、そこに居るのは掌で踊らされているのも分からずに踊り狂って高笑いなんぞしていたクロハくんじゃあないか。」
「自分こそが真の裏幕黒幕だとか傲慢にも思っていたあのクロハくん?」
「まったくもって大馬鹿者だったあの滑稽なクロハくんだ、間違いない。」


「そう、俺たちこそが真の黒幕であり裏幕でありラスボスなのさ!!」
「要するに君達はこのカゲロウループを意図的に起こした張本人を助けようとしていた訳なんだよ、まったく滑稽だね!!」
「本当に、腹がよじれるかと思ったくらい笑わせてもらったよ!」
「―強くてニューゲーム、なんて詰まらないからね。また記憶を無くしてニューゲームでどうだい?俺たちもまた参加させてもらうよ。あぁ、でも次は設定を少し改変してみるのも面白そうだ。どうだい、アザミさん?」
「―ふむ、いいのではないか?次はぬしらとわれで家族になってみるのもいいかもしれんのう。」
「なるほど、それは名案!伸太郎と私で夫婦でしょう?でもそうしたらアザミさんはどの役割になるんだろうね?」
「きっと子供か親友辺りにでもなっているんじゃあないか?どっちでも面白そうだな。」
「確かにそれは面白そうじゃ。どれ、今回はそうしてみようか。」


「始めまして、如月伸太郎だ。それで、」
「私が如月文乃です!!皆、よろしくね!!」
「わしは如月アザミじゃ。以後よろしく頼むぞ。」


「ああ、またか。」
「まさか攻略以前にループしていることに気付かないとはね…」
「まぁ、伸太郎がいないと気付くこともできないのだろう。あいつの言葉を借りるようで嫌なのだが、まさに「なんて馬鹿な生命だ」と言う所か。」
「あは、言えてるな。―それにしても、またループかぁ…。そろそろ別ルートでも作ってみるか?同じ演劇を続けて見るのは詰まらないし、展開が読めて面白くない。それも非常にだ。」
「伸太郎の言うことに賛成。確かに最近飽きてきたもの。だってあの子達、同じ行動しかしないんだよ?詰まんないったらありゃしない。」
「では、次は攻略した直後にループさせてみるのはどうだ?一気に絶望に変わる瞬間の顔は見物だぞ。」
「―それいいなあ。だがそれなら、クロハくんをあいつら側にやっておいて攻略直前に前ループの記憶を戻すのはどうだろうか。クロハくんの葛藤する姿が見物だぜ。」
「それいいね!でもそれなら、私たちも攻略直後まで居ようよ、きっとあの子達のことだから簡単に信じてくれるよ!」
「―ふむ、構成が終わったようだぞ。因みに今さっきの意見は全て取り入れておいた。」
「さっすがアザミさん!俺たちに出来ないことを平然とやってのける!」
「そこに痺れる!」
「憧れるぅ!!…じゃろう?」
「俺の台詞盗られた…」
「まぁ、まぁ、伸太郎元気出してよ。」
「す、すまなかったな…では、次のセカイで。」
「おう、次のセカイで。」
「えへへ、次のセカイで!」


こんな感じのほのぼのダーク話でござい。アザミさんと伸太郎くんはどうしてか絡ませたくなるのさ。本妻がいつも入ってくるけれどもね。本妻と言えば、公式はマリシン(シンマリ)も推してくるよね、きっとこの話でも絶望したマリーちゃんならば伸太郎くんたちの元に訪れるよ、セットくんたちを諦めればの話だけれどね。


「忘れられない。―忘れるわけ、ない。」
「今更気付いたんだよ、お兄ちゃんやアヤノさんがどれだけ大切な存在だったのか。」
「だからね、僕らは君達を勝手に救うことにしたんだ。」
「嫌がったとしても、絶対に連れ戻してやるよ。」
「―だから、さ。」
「――覚悟してくださいね。」









「準備できたか?」
「いつでもオーケー!」
「我も準備は完璧じゃ。」
「よし、いくぞ!!」

「いつでも困ったことがあったら相談に来て見てくださいな。完璧に、完全に、絶対に、後も残さず解決して魅せましょう。」

「―お前、誰だ…?」
「俺は如月伸太郎、先生だって知ってるだろ?いきなりどうしたんだよ。」
「―いや、俺の知っている伸太郎は、もっと寡黙で、もっと慇懃無礼な、そんな天才だ。―だから、もう一度聞こう…。お前は、誰だ…?」
「―ふは、」
「――?」
「俺は如月伸太郎だよ。それ以上でもそれ以下でもない。ただ、お前の知っている如月伸太郎が偽者なだけさ。」
「なっ、――」
「いやはや、滑稽だったぜ?偽の俺に親しく話しに行くお前達の姿。誰もそれが偽者なんて微塵も思わないのさ。」


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