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 強い光を感じて目を開ける。と、目に映ったのは一面の赤だった。一瞬、血液かと疑う。……が、日常では一番出てきにくい答えがすんなりと出てくるなんて、案外俺も毒されていたんだなあ…なんて、考えながらその答えを改める。
 よくよく考えてみれば、この赤がもし仮に血液だったとしたら、嗅ぎ慣れてしまった、あのむせ返るような鉄の匂いがするはずだ。だが、今現在進行形でそんな生臭い匂いは一度もしていないし、どちらかといえば日向で干した洗濯物のようなぬくもりの感じられるような匂いがする。なんだか変態くさい発言をしてしまったようだが気のせいだ。ああ、気のせいだ。……洗濯物といえば、日干しした洗濯物から香るあの安心するような匂いはダニの死臭だったと言われていたが、あれは単なる噂である。実際のところ、洗濯後に残る汗、脂肪、洗剤などの成分が、太陽の光や熱で分解された結果発生する、アルコールや脂肪酸等の揮発物質なのだ。まあ、ダニだのなんだの、一々考えながら干している訳でもなし、とくに意味もなにもないのだが。

『何をぶつくさと考えているんだい、主?』



(続きます)


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