番外へん



「――白状しろよ」
『やだね』

 つんとそっぽを向いたみーくんを見て笑う。いや、いつもはそうなんだけどね?みーくんも反省してるようにも見えるし。でも今回はちょっと…ねぇ?



 事の発端は2時間前のことだった。いつも通りお義母さんと朝食を作っていると、みーくんとヒビヤ君が階段を下りて、こっちへとやってきた。なんだか2人ともしきりに目を擦ったり、欠伸をしていたりして。徹夜でもしたのかな、珍しい。とか思っちゃったりして。

「おはよ」
『おはようゆーくん』
「『おはようみーくん、ヒビヤ君』」

 一通り挨拶を済ませてリビングの席に着く。今日はフレンチトーストとスクランブルエッグだ。コーヒーは奮発してクリスタルマウンテンにした。ヒビヤ君はミルクだけどね。
 よく意外だとか言われるけど、コーヒーは好きだ。確かにコーラも好きだけど、コーヒーが一番。適度な酸味と苦味。そして芳醇な香り。朝はミルクや砂糖を少し入れて、カフェ・オレにするのもいい。
 そう考えながら少し濃い目にしたクリスタルマウンテンにミルクをたっぷりと注ぐ。俺とみーくんは好みが一緒だから、みーくんのマグカップにもミルクを同じ位。砂糖は適等な量を。

「『おまたせ』」
『ありがと』

 控えめに湯気が立つカフェ・オレがなみなみと入ったマグカップをみーくんに渡す。それを受け取ったみーくんはふーふーとカフェ・オレを冷まそうと息を吹きかけ、一口飲んだ。

『―なんかいつもより美味しい?』
「『今日のはいつものより美味しい豆を使ったからな』」
『なるほど』

 みーくんが、かたりとカップを机に置く。なんとなくヒビヤ君を見ると、スクランブルエッグとフレンチトーストはなくなり、無言でミルクを飲んでいた。

「―なに?」

 そのままぼーっとヒビヤ君を観察していると、ミルクを飲み終わったヒビヤ君が胡乱げな眼差しで見ていることに気付いた。…いやあ、なんかぼーっとしすぎたかなぁ…?……なんて。

「『いやいや、別に?』」
「―ふーん。ならいいけど」

 ごちそうさま。ヒビヤ君はそう言ってから上の階に上っていった。多分用意された部屋に戻ったのかな。別に面白いものもないんだけどね。
 ……はあ、やっと2人っきりだ。

「なあ、禊くんや」
「なんだい、シロちゃんや」
「――もしかして。何か、隠し事をしてないか?」
「―どうしてそう思ったのかな?『俺はいつでもシロちゃんには素直なんだぜ?』」
「それは違うよ!」
「メタいね!」
「いやいやそれほどでも」
「特に褒めてないよ」
「知ってた」

 滔々と言葉が流れる。一定のリズムをでの会話。大体はほんの少しの嘘とノリだ。気にしちゃ負けだよ。読み流してしまえばいい。…ところで俺、そんなにメタいかなあ?

「―で、結局?」

 禊くんを睨み付ける。だから、嘘吐いてるのは分かってるんだって。何年一緒にいると思ってるのさ。もう18年も経ってるんだよ?さっさと吐いてくれないかなあ。そろそろ詰問するのも疲れてきちゃったし。

「『だから違うってば』まったく、疑うなんて酷いなぁ」
「わかってないなあ。禊くんの嘘はわかりやすいんだよ」
「えっ、嘘」
「ほんと」

 ちょいちょいと禊くんのほっぺをつっつく。指に吸い付くような感触とぷにぷにとした弾力があって凄く気持ちいい。なるほど、これがもち肌というものか。禊くんの女子力高いな!
 そう考えながらぷにぷにしていると、手をはたかれた。痛いなあ。

「シロちゃんが構ってくれるのは嬉しいんだけど、……なんでそんなにつっつくのさ?」
「きもちいから」
「…ふーん……」

 お許しが貰えたのでさらにぷにぷにしてみる。…ああ、気持ちいなあ。グッズにしたら売れそうなぐらい気持ちい。無心にぷにぷにし続けてみる。

「…」
「……」
「…」
「……」
「…おじさんたち、なにしてるのさ」
「『…あれ?』『ヒビヤくん?』」

 ひたすらぷにぷにしているとヒビヤ君が胡乱げな目で俺たちを見ていた。…いつの間に下りてきたんだろう? 
 そんな疑問は置いといて、ヒビヤくんが来たのは好都合だ。…ねぇ?いい加減さぁ…

「――白状しろよ」




 ……おかえり。大体の話は分かったかな?ようするに、イマココ!という訳。いつもはどうでもいいし、こんなに追求することなんてないんだけどね。なんでかみーくんが俺に嘘を吐くのは許せないなぁ。…なんちゃって!!俺がみーくんを“許し”たら、いろんな意味でおわっちゃうからね!!

「『今なら“許さない”であげるからさ!』『ほら!』『早く白状しろよ!!』」
『できれば許して欲しくはないかなあ』
「『ならいいだろ?』」
『うーん』『もー』『しょうがないなぁ』 

 やれやれ、と芝居がかった動きで頭を振る。またか…なんて思いながらみーくんを眺めて、ふとヒビヤくんを見る。小馬鹿にするようなみーくんの態度が気に入らなかったのだろう。少し顔を顰めていた。まあ、みーくんのあれは慣れないと大変だからね。しかたないのかな。

「―なに見てんのさ、許兄」
「『いやいや別に?』『特に深い意味はないよ』」
「そ」

 そう言ってヒビヤくんがふい、と俺から顔を背けた。…恥ずかしいのかな?いや、でも、どこに恥ずかしがる要素があるんだろう??理由がわからなくて首をかしげる。

「うわっ」
「『ヒビヤくん?』『どうしたのさ』」
「いや許兄こそどうしたのさ!!それすっごく気持ち悪いよ…!」
「『それ?』『それって何さ』」
「首!!」
「『んん?』」

 どこが可笑しいのさ。ただ、首を45度くらいかしげただけだし。別に誰だってするよね。…いや、みーくんだって俺と同じことするじゃん。気持ち悪いなんて、そんなこと言われたら俺、心折れちゃうよ?だってもやしメンタルだもん。しゃきしゃきですぐに折れちゃうもやしメンタルだもん!!…嘘だけど。

「―あー、そっか。ごめんね、許兄」
「『ん?』『一体何に対して謝っているんだいヒビヤくん』『俺なんかされたっけ??』」
「いや、きっと許兄たちにしかわからない常識があるんだなって思っただけだから。気にしないで」
「『えー』『まったくヒビヤくんはしょうがないなあ』」
「はいはい」

 …なんか、はぐらかされた気がするなあ。いや、別に俺達の相手なんてしてられないだろうし、スルーされるのは定石なんだけどね。そうしたらヒビヤくんをいじることが出来なくなるって考えたら、惜しい気がしなくもないかなーって。
 だって正直、この小説のヒビヤくんのスペックって二つしかないよね。常識人スキルとツッコミスキル。ってことはだよ?スルーしたらツッコミっていうヒビヤくんのアイデンティティーがなくなるんだぜ!?正直ただの空気になっちゃうような気がしない??メタ発言?なにそれ美味しいのかな?

「『なんて茶化しながら、俺はおもむろにヒビヤくんの頬に手を伸ばした、まる。なにをするかって?そんなの一万年と二千年前から決まってることだよ…そう、ヒビヤくんの頬をむにむにするためさ、感嘆符!』」
「だからプロローグを口頭で語るのは止めよう許兄!!!??文字面でしか判らない冗談も!!あとメタ発言は駄目だってば!創生のアクエリオン面白いよね!!!それにまた言ったことが行動に移されていない!!!!!ねぇ!!!??デジャヴを感じるんだけど!!!????」
「『ヒビヤくんデジャヴなんて言葉知ってたんだね!』『おっどろきー!!』」
「これ位知ってるに決まってるじゃん!!おばさんじゃないんだから!!」
「『まあねー』」



………………
……………
…………
………







「えっ、ちょっと待って!!これで終わり!!??禊兄の問題も解決してないのに!!!???えっ!!!???ちょっ!!!?…」

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